ご主人様!これが信頼できる味方(笑)です
『施設にきて……』
『そこに信頼できる味方がいるから……』
モニターに映る少し荒くなった画像。
脚を組み、いつもより青白い顔色。
「……本当に無事なんだよな」
ヒロはとある施設の重厚な扉の前に立っていた。
隣に立つミラは眉一つ動かさずにカードキーをかざす。
サクラは警戒しながら銃を握り直した。
扉がゆっくりと開く。
黒い上品なスーツを着た男がくるりと振り向いた。
きっちりとセットされた黒い髪。
何も映さない黒い瞳。
口端を上げ、微笑んだ。
「やあ」
ヒロは拳を握りしめた。
「味方って……お前かよ!!」
ヒロのツッコミは施設に響き渡った。
「パパ、ヒロ見つけてきた」
小さい声。
ミラはヒロを指さすとアルヴァルトのもとに駆けていく。
「ミラ、よく出来たね。何かご褒美をあげようか」
「おもちゃ、ほしい」
「ちょうど下に沢山運び込まれたそうだよ」
ミラは少しだけ口角を上げるとパタパタとどこかへ駆けていった。
ヒロは何となく意識を逸らし、聞こえないフリをした。
アルヴァルトがヒロに近づく。
「さあ。立ち話もなんだ、上に行こうか」
「上?」
「ノアが待っているよ」
「ここにいるのか!?」
アルヴァルトは小さく頷く。
いつもとは違う雰囲気にヒロの背中はゾクリと冷えた。
(……まさかな)
エスカレーターは最上階まで三人を運ぶ。
目の前には大きな扉が一つだけ。
アルヴァルトは当たり前のように中に進む。
奥の部屋へ進むと大きなガラスの窓。
アルヴァルトはそこに立ち、ヒロを手招く。
薄暗く無菌室のような部屋が見えた。
その中にベッドに横たわるノアがいた。
あの画像と同じように青白いままの姿。
複数のチューブに繋がれ、点滴がポタポタと同じリズムで落ちていく。
「……こんなに悪いのか」
ヒロは心苦しそうに眉を寄せ、呟いた。
「うん?リハビリをしたそうだよ」
しれっと言うアルヴァルトにヒロは理解が追いつかない。
「……リハビリ?どう見ても死にかけてるぞ!」
アルヴァルトは顎に手を置く。
「詳しくは本人に確認してもらえるかな」
「ああ……」
ヒロはベッドに沈む姿を見つめていた。
ハッと顔を上げ、アルヴァルトを向く。
「おい、どういうことか説明してもらうぞ!」
「どこから話そうかな」
アルヴァルトは腕を組み考える素ぶりを見せる。
ヒロは目を細めると強く睨みつけた。
「最初からだ!」
「そうかい?」
アルヴァルトは口角を上げた。
その時、ガヤガヤと話し声と共に扉が開く。
「あっ!アルヴァルト様だぁ」
ニコがイヴの手を引く。
隣に立つ男を見て目を大きくした。
「ヒロさんも一緒だあ!良かったぁ、作戦が成功したんだ!」
「さ、作戦?」
ヒロは不思議そうに首を傾げた。
「……ヒロ、ごめん」
イヴは目線を落とし、頭を下げた。
ヒロは二人の肩に手を置くと大きく息を吐いた。
「……お前ら、心配してたんだぞ……」
徐々に小さくなる声。
語尾が少し震えた。
「あれ?ノアの飼い主じゃん!」
「ステラ……今はまずい……静かにしとけ」
マキシムが慌てたように小声で忠告する。
「はあ?何が?」
「おまっ!見てわかんねえのかよ!感動の瞬間だろ!」
「かんどう?なんでよ?」
「かぁー!これだから戦闘員は人間の感情がねえのかよ!」
「……何あんた。ヤる気?」
部屋がヒヤリと冷える。
「……ステラ、おやめなさい」
部屋の奥からセレスが姿をあらわす。
やや疲れたような表情。
眼鏡をクイッと上げ、タブレット端末を抱える。
「ちっ……」
「セレス助かったぜ!」
マキシムはセレスの背後に隠れた。
セレスは小さく息を吐いた。
「とにかく、座りましょう。ここではノアが休めませんから」
セレスの目は鋭くアルヴァルトに向いた。
ヒロにはそう見えた。




