緊急オペはリハビリの後で
破壊されたシャッター。
古びれた倉庫の中では、呻き声と荒々しい呼吸が響く。
戦闘不能となった男達が点々と転がっていた。
その中央でノアは横たわっていた。
胸を上下に動かし、呼吸を繰り返す。
「体力っ、落ちたなあ……」
口からフッと空気が漏れる。
外から砂利を踏み音が鳴る。
「……ノア、生きてる?」
壊れたシャッターの隙間からユーミルが顔を出す。
転がる男達を横目に見ながら眉を寄せる。
ノアは手を挙げるとヒラヒラと振って見せた。
「……生きてるよ。ギリギリ、ね」
ユーミルは小さく息を吐く。
そして、転がる男に銃を突きつけた。
カチャッと金属の音が鳴る。
「ねえ君、バレてないと思ってる?」
男は薄目を開け、ゆっくりと両手を挙げた。
「……ユーミル」
「ノア、ちゃんとトドメを刺さないと背後を狙われるよ」
ノアはクスクスと笑い、立ち上がった。
ふらりと数歩揺らめく。
「ユーミル、教えてあげるよ」
ノアは走り込みながら男を蹴り上げる。
呻き声とともに男は白目を向いて倒れた。
「はぁっ、これで十分だよ」
「相変わらず甘いね」
ノアの口元がわずかに動いた。
カシャとミントタブレットを数粒、口に放る。
ノアはユーミルの横を通り、外へ歩き出す。
二人がすれ違う瞬間。
ユーミルはノアの細い腕を掴んだ。
「ノア、前の話だけれど……僕はトップになるつもりはないよ」
「……」
青い瞳の中には眉を寄せたユーミルが映る。
「もしもの話だろ」
「それでも──」
ノアは目を細めると、くるりと踵を返す。
フラフラと歩きシャッターをくぐった。
「ほら、ユーミル帰るよ」
風に揺れる金色の髪は、夕焼けに染まりキラキラと輝いて見えた。
ユーミルは何も言わずにノアの背中を追った。
一方その頃。
銭湯ではエクリプス幹部達の打ち上げが行われていた。
「いやぁ、俺は今回こそ死んだと思ったな」
マキシムは自身の太ももをバシバシと叩きながら笑い声をあげる。
コーヒー牛乳の瓶を一気に傾ける。
「ぷっはぁぁ!やっぱ生きてるって最高だぜえ!」
「マキシム、口にヒゲ!」
イヴは眉を寄せ、ティッシュを差し出す。
ハルトが髪を拭きながらテーブルの前に座る。
「おっ、俺もコーヒー牛乳で!」
エリザが蓋を開け、瓶を手渡す。
軽く体を伸ばしていたレオンがハルトに視線を送る。
「ハルト、やけに遅かったな」
「まあね。うちのトップは人使いが荒いだろ?」
「たしかにな」
レオンはフッと口角を上げた。
その数秒後、レオンがハッと顔を上げる。
「アイツ……今どこにいるんだ」
「あー、リハビリするって倉庫に」
「リハビリだと!?」
レオンはテーブルを叩くと何も言わずに立ち上がった。
その背中にハルトは投げかける。
「時間的にもう終わってるって」
タイミングよく一台のタクシーが銭湯の前に止まった。
降りてきたのはユーミル。
「みんなお疲れ様」
「おつかれー」
「よおっ」
各々が返答した。
「おいっ!ユーミルてめえ!よくも──」
文句を言おうと立ち上がったマキシムをレオンは無理矢理押し込めた。
「ユーミル、ノアはどこにいる」
「ノアなら施設に戻ったよ」
レオンは息を吐いた。
「今、セレスが緊急オペに入って」
「オペ!?」
ユーミルは視線を落とし、小さく息を吐いた。
「鎮痛剤で本人も無自覚だったんだけど……リハビリで傷が開いてね」
「それリハビリって言わないんじゃ……」
イヴが青くなり口元を押さえた。
「そういうわけでセレスの機嫌も悪いから気をつけて」
休憩所は一気に静かになった。
「……もう少し休んでから戻るか」
「賛成ー!」




