頭を下げたら仕事しろ!
並ぶモニターの前で頭を下げる大男。
向こう側では、セレスが満足したように頷く。
「まあ、今回はこのくらいで許してあげましょう」
「……ああ」
散々文句をつけられたレオンは、どこか落ち着いた表情に変わっていた。
AIのノアはヌルヌルと動き、赤いボタンを指差す。
「それじゃあ、進展があったらボタンを押して通信して」
「赤く点滅していれば通話可能だよ」
ノアは立ち上がり、両手を大きく振る。
「じゃあ頑張って」
モニターはプツンと切れた。
ユーミルが手を叩く。
空気が変わる。
「それじゃあ、各々作業を始めようか」
「おう!」
「了解!」
明らかに士気が上がった監視室。
一人だけ立ち尽くす男がいた。
「……ユーミル、俺は?」
「ノアは戦闘の予定はないと言っていたけど、万が一にも備えて準備していた方がいいだろうね」
「承知した」
レオンは部屋を出て行く。
ユーミルは小さく息を吐き、大きな背中を見送った。
モニターの前ではマキシムが声を荒げていた。
画面をバシバシと叩く。
「おいイヴ!これ紙で出せねえのか?」
「え?このまま見ればいいじゃん!」
「あ゛?紙じゃねえと効率悪いんだよ」
「このペーパーレスの時代に!?」
「印刷してくれ」
「……う、うん」
イヴは渋々、印刷を始めた。
業務用複合機が音を立てる。
印刷された資料をパラパラと捲り、次々とマーカーを引くマキシム。
「ひっでぇな。数字がメチャクチャじゃねえか」
「おえっ!気持ちわりぃ」
マキシムはブツブツと呟き続けた。
ユーミルが隣に立ち、書類を覗き込む。
「マキシム、何か手伝おうか?」
「おっ、ユーミルなら分かるな!この送金リストで同じ金額のやつに色つけてくれ」
「定額送金から割り出すつもりだね。これならイヴでもできそうだけど」
「アイツはダメだ!まるでセンスがねえ!」
イヴが頬を膨らませ、目を細めた。
紙をまとめて運ぶ。
「なんなのセンスって?意味わかんないんだけど!」
「適当に持ってくんじゃねえ!年ごとにまとめろ!そういうとこだぞ!」
「うっ……」
マキシムは耳に赤ペンをかけた。
イヴは唇を尖らせて紙を仕分けするのだった。
「……別にこれくらい、いいじゃん!」
「イヴは感覚肌が優れている天才タイプだからね。こういうコツコツと積み上げる仕事は相性が悪いんだね」
「……て、天才!?」
イヴの尖った唇は、ふにゃりと歪んだ。
「よぉーし!みんなでサイラスを捕まえるぞぉ!」
イヴは拳を高く上げる。
ユーミルは口元に手を当てるとクスリと笑った。
一方その頃。
レオンは銃を構えていた。
人型の的に狙いを定め、引き金を引く。
パァン。
乾いた音が響く。
左胸のど真ん中。
眉間の間。
難なく穴が開く。
「この程度ではダメだ」
レオンは小さく呟く。
マガジンを銃に装填する。
「……サイラスは俺が、撃つ」
銃声は地下に響き渡った。
何度も。




