瀕死の奴隷の指示は聞いとけ!
「さあ、どうする?」
青い目は真っ直ぐにマキシムを見つめる。
マキシムはゴクッと喉を動かした。
「……やってやるよ。かかってこいや!」
「さすがマキシム!」
イヴが手を伸ばし、マキシムとハイタッチした。
「……じゃあデータを送るよ」
PCの画面にメールの受信通知。
イヴがメールを開く。
銀行の取引一覧や組織の資金繰りデータがズラリと並ぶ。
「これは旧中枢の内部資金データだよ。金の流れからサイラスを探る」
「はーん。そこで俺の出番って訳だな」
「マキシム……できるの?」
「おい、俺を誰だと思ってんだよ!」
マキシムは自分の胸をドンと叩いた。
そして、咽せた。
イヴは呆れながらマキシムの背中をさする。
「お、俺はこのエクリプスのたった一人の経理だからな」
「えっ……一人でやってたの?」
「ああ、そうだよ!ノアから人を増やすと情報が漏れるとか言われてな!」
「失敬だな。決算は僕も手伝ってたよ」
「うちって決算あったの?」
マキシムが目を細めてイヴを見下ろす。
「当たり前だろ!お前社内報読んでねえのか?」
「えっ……エクリプスって会社なの?」
レオンがフッと口元を緩めた。
「会社ではないが、お前だって給料もらってるだろ」
「もらってるけど」
「そういう処理もマキシム一人でやってたんだよ」
「えっ!」
イヴは目を丸くして、マキシムを見上げる。
マキシムはドヤ顔をし、眉を動かす。
イヴは、そっと目線を逸らした。
「必要なものはイヴからもらって。僕はしばらく動けないからマキシムに任せるよ」
「おう!ゆっくり休めよ!」
セレスが咳払いをする。
「私は休めませんが」
「あ」
AIのノアが足を組み替える。
「ユーミル」
「うん。君の主人のことだろ?確か、ヒロだったかな」
「……そう。ハルトを」
「ハルトを変装させるんだね。目的は、ヒロさんを安全な場所へ誘導、そして保護のため。場所は、どこにする?」
「施設……僕は死んだことにする」
「なるほど。君の遺言でヒロさんを誘導するんだね。じゃあハルトには僕が依頼しておくよ。変装するならレオン、かな?」
「ユーミルが相手だと話が早いよ」
ユーミルは頬を上げ、軽く髪をかき上げた。
「僕もノアと話すと回りくどくなくて楽だよ」
マキシムは頭をガシガシと掻いた。
「お前ら、何を言ってんだか分かんねえよ!」
「マキシム、君は作業を始めなよ」
ユーミルは冷めた目でマキシムを見つめた。
「お前!俺との会話をめんどくさがんな!」
レオンは目を細めモニターを見る。
「ノア、俺には何かないのか?」
AIのノアは腕を組み、考える仕草を取る。
首を左右に傾げる。
そして、パァッと笑顔で人差し指を上げた。
「ない」
「お前!遊んでるだろ!」
「プロテインでも普及すれば」
「それは……もうやっている!」
ノアはまた腕を組んで、首を振り出す。
「戦闘する予定はないからなあ」
「俺は用済みか……」
「……そうそう、義父さんがレオンを褒めていたよ」
AIのノアは立ち上がり拍手する。
「あの状況で正確に心臓のど真ん中を撃ち抜くのは天性だってさ」
「ご褒美くれるってよ」
「よかったね」
ノアはニコリと親指を上に立てた。
「……俺は、お前を殺しかけたんだぞ!」
「必要なことだったろ」
「俺はお前を裏切って……」
「騙されただけだろ」
「……俺は」
セレスが珍しく声を荒げる。
「レオン、そんなに反省したいのなら私に詫びなさい!」
「……セレス、悪かった」
「頭が高いですよ」
「……すまなかった」
「気持ちを込めなさい!」
「……すまん」
レオンは、だらだらとセレスに謝罪させられ続けた。




