格上相手に舐めプは厳禁です
シャカシャカとシェイカーを振る音。
マキシムとレオンはプロテインを作っていた。
「俺、別に飲みたくねえんだけど」
「その不摂生な体を何とかしてやるからな」
「頼んでねえよ!」
蓋を開け、一気に飲み干すレオン。
マキシムは恐る恐る上澄みを啜った。
「なんだこれ。普通にうめえ!」
「ロイヤルミルクティー味だからな」
「えっそんな味あるの?レオン、アタシも飲みたい!」
「チョコブラウニー味もあるぞ」
「アタシ、それがいい!」
レオンは嬉しそうにシェイカーの準備を始めた。
マキシムがゴクゴクと喉を動かす。
「ぷはぁ〜。甘味が欲しかったんだよな」
「ほらよ」
レオンはシェイカーの蓋を外し、イヴに手渡す。
イヴは、モニターから目を逸らしプロテインを受け取ろうとした。
その瞬間──
「……イヴ!ペクが動いたぞ」
レオンが焦ったように指差す。
「えっ?ほ、ほんとだ!」
イヴは急いで一口啜るとモニターに向かう。
カタカタとキーを叩き、ペクを追いかけた。
「サイラスとかいうヤツに会いに行くんだよな?」
「おそらくは……」
ペクと護衛は、黒い車に乗り何処かへ向かう。
「イヴ、巻かれんなよ!」
「分かってるって!」
緊張感の漂う監視室。
イヴは、カタカタと血眼でキーを叩く。
ペクが乗った車が到着したのは、小さな喫茶店だった。
「……嘘。ここなんだけど!」
「サンクチュアリの初期メンと会うのに純喫茶って……」
レオンは腕を組み壁に寄りかかる。
「イヴ、中の様子分かるか?」
「……カメラが古くて音までは拾えなさそう」
「もう一回ペクのスマホのハッキングできねえのか?」
マキシムがイヴの隣で身を乗り出した。
「やってみる、けど……」
モニターに店内の様子が映る。
客は一人だけ。
ウェーブがかった焦茶色の髪に眼鏡をかけた男。
「なんだ?人形みたいな面だな」
「イケメンじゃん!かっこよ〜」
「俺が見た写真とあんま変わってないぞ……アルヴァルトと同じ種類の人間か」
口々に感想を語る面々。
マキシムがさらに身を乗り出した。
「イヴ!もっとカメラアップにしろよ!」
「えっ?」
「いいから!」
「バレちゃうって!」
そっと店内カメラをズームするイヴ。
その瞬間──
パァン。
乾いた音と同時にモニターは真っ暗に変わった。
静まる部屋。
一斉にマキシムに視線が集まる。
「……お、俺のせい?」
「マキシムー!!」
イヴはバシバシとマキシムを殴った。
「いってぇ!やめっ」
レオンは椅子に座り、腕を組み直した。
「早撃ちか。やけに正確だな」
顎に手を置き、目を細めた。
「あの銃の撃ち方、あいつと一緒だったな」
「あ?」
「……いや、何でもない」
後ろの簡易ベッドがモゾモゾと動く。
布団から顔を出すユーミル。
耳から耳栓を外す。
「……おはよう。何か進展あった?」
「あっ……」
三人はユーミルの前で正座していた。
「イヴ……君は一体この仕事を何年しているんだい?狭い店内さらに古いカメラはズーム音で気付かれるリスクがあるってこと知らないわけがないよね?ましてや相手は格上。無理せずに外の建物や車から監視が定石だろ」
「……はい」
がっくりと頭を下げるイヴ。
「レオン。動きがあったら僕を起こしてって言ったよね」
「……ああ。プロテインを振る舞っていたら忘れていた」
「君は少し緩み過ぎじゃないのか?アルヴァルトの右腕だった頃を思い出しなよ」
「……いい思い出ではなかったんだが」
ユーミルは目を細めた。
レオンは静かに頭を下げた。
マキシムは静かに正座し続けた。
ユーミルはマキシムの前を通ると小さく舌打ちをした。
「おいっ!それはダメだろ!」
マキシムは無視された。
それから誰も口を開かなかった。
ピリピリとした空気が流れていた。




