野生の勘でヤマを張れ!ハズレたら袋叩き!
カタカタとキーを叩く音。
マキシムのイビキが響き渡る監視室。
イヴは怒りを抑えながらペクのスマホに潜り込んでいた。
「ユーミル、入ったよ。データ読んでるとこ!」
「イヴ、ペクの追跡もお願い」
「了解っ!」
モニターに地図が表示され青い丸がピコピコと点滅する。
ユーミルはそれを眺めながら、白い髪をくるくると指に絡める。
イヴはジュースの缶を傾ける。
モニターを見て小さく息を吐いた。
「ペクってかなり用心深いヤツかも」
「着信履歴も毎回消してるし」
イヴは、ログを目で流しながらキーを叩く。
「まっアタシなら、すぐ復元できちゃうんだけどね!」
タンッ。
ENTERキーを叩く。
モニターにはペクのスマホの着信履歴が表示される。
「ノアの配信が強制終了した時に、複数の着信があったみたい」
「全部非通知か……イヴ探れる?」
「時間かかるかも、だけど」
「イヴが盗撮以外のまともな仕事をしている……」
レオンは目をぱちぱちと瞬きしながら呟いた。
「うるさい!アタシだってやる時はやるの!」
「……ノアにだって腕を買われたんだから」
イヴの眉が少しだけ下がる。
頬を両手でパチンと叩き、モニターに視線を戻した。
その時。
「ふわぁぁああ。」
大きな欠伸と共にマキシムが目を覚ます。
イヴの目が鋭くなる。
「マキシム!あんたも仕事してよ!」
「あ゛?もうハッキングできたのか?」
「もうとっくだし!」
「やるじゃねえか!さすがノアの側近だな」
イヴは黙り込む。
少しだけ口元が緩んだ。
「……別に側近じゃないし」
「か、彼女だし!」
自分で言って、勝手に赤くなるイヴ。
ユーミルがマキシムの服をぐいっと引っ張る。
「マキシム、この着信履歴で引っかかるものある?」
「はあ?引っかかるだあ?」
「直感で」
「直感?じゃあこれだな!」
マキシムが指をさしたのは、一週間前の非通知からの着信。
イヴもレオンも訝しげにユーミルを見つめる。
「おいおい!俺の直感は当たるぜ〜?」
「いや、そんなテンションじゃないから」
イヴは冷たかった。
缶ビールのようにキンキンだった。
「さすがに適当すぎないか?」
レオンが腕を組み、壁に寄りかかる。
「なんだよ!俺を信用してねえのか?」
「いや。しかし、なあ……」
レオンは困ったように眉を寄せた。
ユーミルはイヴの隣に立ち、非通知履歴を指さす。
「イヴ、先にこの非通知の解析して」
「え?ユーミル……本気?」
「このギャンブル狂の直感は当たるんだよ。納得はいかないけどね」
ユーミルは蔑むような目線をマキシムに送る。
「褒めてんのか、貶してんのか、ハッキリしろ!」
イヴは眉を寄せながらもカタカタとキーを叩き続けた。
「これハズレてたらマキシム、袋にしよ!」
「なんでだよ!」
マキシムは扉の近くまで後退りし、逃亡ルートを確保する。
「俺の勘はな、外さねえんだよ!」
「……金が絡むとなんでか当たんねえんだがよぉ」
俯き、少しだけ声が小さくなる。
「もうギャンブルやめなよ!」
「うるせえ!負債を捲るまではやめねえよ!」
「完全に依存症、だな」
レオンは呆れたように小さく息を吐いた。
イヴがくるりと椅子ごと回る。
「ユーミル、非通知の解析もうすぐ出るよ」
モニターが切り替わる。
地図に赤く円が描かれる。
「発信元はここ……ってあれ?」
「普通の住宅街だな」
「ペクの愛人の家じゃねえのか?」
マキシムは頭をガシガシと掻く。
殺気を感じ、そのままくるりと向く。
「こんな住宅街に黒幕はないって!……マキシム、袋決定!」
「レオンやっちゃって!」
イヴは指をパチンと鳴らし合図を送る。
「お、俺?……死んでもしらないぞ」
レオンは指の骨を鳴らした。
ボキボキと恐ろしい音が響く。
「おい、まだ分かんねえだろ!」
レオンが一歩ずつ近づく。
マキシムも一歩下がるが、後ろは壁。
マキシムの顔に大男の影がかかる。
「話し合おう!なっ!」
レオンの拳がマキシムに向かって落とされる。
ドゴォォン。
やばい音が響いた。
まっすぐ伸びる拳。
その横で震える小さくなったマキシム。
マキシムのギリギリ真横に壁穴があいた。
「ハハッ!冗談に決まってるだろ!」
レオンは笑いながら壁にめり込んだ拳を抜き取る。
「冗談で壁に穴開けんな!この筋肉バカ!」




