誰かパスワード教えろ
廊下を進むと広がる戦闘訓練施設。
そこはノアが無断で作った地下室だった。
「そう言えばPCあったな」
レオンが思い出したように呟く。
「ホント?どこ?案内して!」
「監視室だ」
「人んちの下に監視室って狂ってんな」
「それには俺も同感だ」
レオンはズカズカと慣れたように施設内の奥に向かった。
イヴとマキシムが後ろをついて行く。
なぜかマキシムは一人だけ汗だくだった。
監視室。
複数のモニターが並ぶ。
イヴが椅子に座り、電源を入れる。
一斉に起動するモニター。
マキシムも横にある椅子に跨ぐように座り、モニターを見守る。
「いけそうじゃねえか」
「まだ」
イヴは小さく呟く。
「……やっぱり」
画面に映ったのは──PWの文字。
「パスワード……」
「レオン!知らない?」
イヴはくるりと椅子を回し、レオンに向く。
この中で唯一、施設に出入りしていた男。
レオンは、何度かこのパスワードを見ていた。
しかし、興味がなく一文字も覚えていなかった。
「……悪い」
「何か適当に打ってみるか?」
「間違えてもロックは掛からないと思うけど……」
「じゃあ、適当に試すぞ!」
三人はノアっぽい単語や数字の並びを色々試した。
「noah sake」
「tabacco」
「kuzu」
徐々にイヴの顔色が変わる。
「もう……なんなの!」
椅子の背もたれに寄りかかり、天井を見上げる。
「目の前にあるのに!」
「お、おい!落ち着いて部屋になんかないか探せ!」
マキシムが引き出しや棚をひっくり返す。
「この部屋、何もねえ!」
「…….まあノアの性格からしてパスワードを残すわけないよね」
「早く言え!」
マキシムはガシガシと頭を掻くと、大きく息を吐いた。
「もう、アイツに聞くしかねえか」
スマホをポチポチと操作する。
「あ、ユーミル!聞きてえんだけど」
「このタイミングで連絡してきたと言うことは、無事にノアのPCを見つけたと言うことだね!」
「ああ。そうなんだけどよ」
「だとしたら、僕に連絡してきた理由……おそらくはパスワード、かな?ノアのパスワードを当てるのはかなり骨が折れそうだね。まずはどういう流れでPCを見つけたのか教えてもらえるかな?」
「ん、ああ。」
マキシムは、ノアの部屋に自分たちの石膏があったことや星空の爆走トロッコを話した。
「なるほどね!この流れだとノアは完全に僕たちが来ることを読んでいたね。パスワードのヒントになっている可能性が高い……」
数秒間の沈黙。
「…… LBV 1806-20」
「ん?」
「パスワードはlbv180620」
「なんだそれ?」
「星の名前だよ。銀河系で一番輝く星。ノアとは共通点が多い」
イヴは真剣な表情でカタカタと打ち込む。
そして、ENTERキー。
じっと画面を見つめ、息を飲む。
画面に浮かぶ文字。
──welcome!
「すごっ!いけたよユーミル!」
「やっぱりね。LBV 1806-20は、銀河系で最も明るい恒星でしかも発光色は青!比較的新しいスタークラスターの中心になってる。まさにノアそのものだね」
「ノアのやつ、俺たちじゃ絶対解けないパスワードにしてんじゃねえかよ!」
マキシムが悪態を吐き、ため息をついた。
「じゃあ、こっちもひと段落ついたからそっちに向かうね」
「お、おい!トロッコに乗るのか?危な」
プツッ。
通話は終わった。
なんとなく三人の心の中には不安が残っていた。




