暴走トロッコは星空をノーブレーキで走る
長く地下へ伸びる階段。
三人の足音だけが響いていた。
階段の下は、ただの広い空間だった。
先は真っ暗で何も見えない。
「何だよ……ここ」
マキシムが辺りを見回しながら、戸惑うような声をあげる。
レオンが警戒を強めながら周りを探る。
「俺から離れるな!何があるか分からないからな」
レオンが言い終わる前に、一瞬で視界からマキシムが消えた。
「うわぁぁ!」
「なに!マキシム!?」
イヴが慌ててマキシムを照らす。
普通に転んだだけだった。
「……ねえ、何してんの?」
イヴがジト目で床に横たわるマキシムを見下ろす。
マキシムは尻をさすりながら、懐中電灯で床を照らした。
「なんでこんなとこに……線路があんだよ!」
「本当だ……」
イヴは線路に電灯を当て、先を照らす。
「ずっと続いてるっぽい……」
「電車でも通ってんのか?」
レオンは電灯を当て、使えそうな物を探す。
「あれじゃないか?」
照らされたのは手漕ぎトロッコ。
シーソーのような手押し部分がついている。
「ゲームみたい!」
「おいおい、遊びにきたわけじゃ……」
イヴは一番に乗り込む。
「二人は漕ぐ役ね!」
ビシッと指を指す。
「まあ、他には何も無さそうだな」
レオンは渋々、トロッコに乗り込んだ。
手漕ぎ部分に手をかける。
「ほら!マキシムも乗って!」
マキシムは眉を寄せ一瞬抵抗するが、頭をガシガシと掻きながら乗り込んだ。
「じゃあ、行くぞ。」
「レッツゴー!」
イヴは拳を突き上げた。
レオンとマキシムで交互に力を入れて漕ぎ続ける。
ゆっくりと進むトロッコ。
「なんか遅くない?」
「じゃ、じゃあお前がやれ!」
すでに汗だくのマキシムが息を荒げる。
「マキシム、そんなんじゃ戦闘にならないぞ。俺が鍛えてやる」
「は?俺は戦わねえからいんだよ!」
イヴは退屈そうに頬杖をついていた。
ふと足元を見ると赤いライトが点滅していた。
「ねえ?こんなボタンあったっけ?」
「おいイヴ!あんま勝手にいじんなよ?」
マキシムが言い終わる前にイヴの指はボタンを押していた。
「あっ……押しちゃった」
頭をコツンと叩き、舌を出すイヴ。
「てめえ!何してんだよ!」
トロッコの下から振動が伝わる。
「……なんか揺れてる?」
エンジンのような音。
そして──
急に猛スピードで走り出すトロッコ。
イヴはひっくり返りながら、必死でレオンに掴まる。
「イヴも体幹がなってないな」
「そんなのいいって!いやぁぁぁああ!」
マキシムとイヴの悲鳴が地下に響き渡る。
レオンは風を感じ、気持ちよさそうに目を細めていた。
恐怖で目を閉じ、レオンにしがみつく二人。
「おい、見てみろ!」
「は?」
レオンが上を指さす。
イヴが恐る恐る上を向く。
目を見開き、思わず息を飲んだ。
暗闇の中映し出されたのは一面の星空。
高速トロッコのプラネタリウム。
「……すご。綺麗」
「金かけてんな」
「マキシムは黙って!」
暗闇の地下の星空の中を三人はひたすら進む。
どうやってこの高速トロッコを止めるのか。
誰も考えていなかった。
三人の瞳には瞬く星空しか映っていなかった。




