本当に死んじゃったかも
突然の配信終了に戸惑う場内。
半壊した舞台下に立つレオンも戸惑っていた。
目の前には両手を広げるノア。
「お前、本当に死ぬぞ」
「……うん。そのために来たし」
自身を落ち着けるためにも会話を続ける。
しかし、ザビィがそれを許さない。
「レオン撃て!これ以上の時間稼ぎは裏切りとする」
「……くっ」
レオンは銃を構える。
狙うのは、左胸。
レオンは思い出していた。
アパートの地下にノアが勝手に作った戦闘施設。
自分の射撃を見たノアが言った言葉。
『僕…….レオンに殺してもらおうかな』
『ここ』
そう言って笑いながら心臓を指差した。
(……何かあるんだよな)
レオンの指に力が入る。
そして──
パァン。
渇いた音。
白いシャツがみるみる赤に染まっていく。
口からは鮮やかな赤が零れ落ちた。
先ほどまで走り回っていた身体が崩れ落ちる。
ぐしゃり。
透き通る青い目は何も映さなかった。
ザビィの声が響く。
「ペクさん!これでエクリプスの頭は──」
「まだ確認していないね」
ペクは震えるイヴを指差す。
「アイツにやらせろ」
「ペ、ペクさん……でもノアが最期に」
「やらせろ」
ザビィはイヴの腕を掴むと無理矢理歩かせる。
階段を降り、倒れるノアのもとに。
イヴの手も足も恐怖で震える。
ノアがいなくなってしまったことへの恐怖心。
「ムリ……ムリだから……」
イヴの小さな声。
頭を左右に振り、涙声で訴えた。
「アタシできない!こんなのムリ……」
ザビィは眉を寄せ、イヴの背中を強く押した。
イヴが倒れ床に手がつく。
目の前には赤い水溜り。
その先に動かなくなったノア。
「やらないなら俺が頭に撃ち込む」
カチャ。
装填する音。
二階から慌てた様子でセレスが降りてくる。
「ザビィ。困ります!」
「ノアの頭部は私の寝室に飾る予定ですから」
眼鏡をクイッと指で押し上げる。
「イヴ、これは死んでますよ。さっさと確認してもらえますか?」
セレスはノアの遺体欲しさにイヴを急かす。
イヴは震える足で立ち上がり、一歩ずつ近づく。
ぺたりと隣に座り込み震える手でノアの腕を掴んだ。
まだ温かい。
それなのに、力の入らない腕。
脈は感じない。
イヴの目から涙が浮かび上がる。
「いやぁっ、いやぁぁぁぁああ!!」
イヴの泣き叫ぶ声が響き渡る。
ザビィはチラリとペクを横目に見る。
ペクは満足そうに頷く。
ザビィはようやく深く息を吐いた。
「では、ノアの遺体は貰っていきますね」
「今すぐにでも解体したい!」
セレスは口端を上げる。
ストレッチャーにノアを抱き抱えて乗せる。
セレスの服も赤く汚れるが気にする素ぶりを見せない。
ザビィは若干引いていた。
「こんな物まで用意してたのか?」
「フフッ。当たり前です……ノアの解剖が私の夢でしたから」
ストレッチャーを押しながら裏側へまわる。
「では私はこれで」
「あ、ああ」
煮え切らないような返事。
セレスはウキウキで去って行った。
二階席に座る幹部たち。
ユーミルは頬杖をつき、興味深そうに眺めていた。
「ねえ、マキシム今の見た?」
「ん?」
「あ、そっか。ギャンブルしか興味のない君のような人間があの一瞬を見ているはずがないよね。聞いた僕が間違ってたよ。」
「あ?」
「脈のない人間の指先が動いてた……死後の反射ならありえなくもないが、そもそも生死の確認を素人にさせるのが間違いなのに誰も指摘しない。とするとノアの最期のお願いは誘導か」
マキシムは怪訝そうに眉を寄せた。
「……お前まで狂ったのか?」
「これは何か起こりそう」
マキシムは少し考える素ぶりを見せ、ニヤリと頬を上げた。
「大穴の番狂わせか?乗った!」




