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貧乏大学生が酔った勢いで奴隷契約したら、美少女だと思った相手が男でヤニカスだった件  作者: 家宝ダンゴ
終わりのはじまり

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ご主人様は現実が見れない

玄関に立っていたのはレオンだった。


ヒロは動けなかった。


五日前。


ノアは言った。


誰も家に入れるな。


知り合いでも。


誰でも。


その言葉が頭をよぎる。


「レオン……」


レオンは何も言わない。


ただそこに立っていた。


服は汚れている。


髪も乱れていた。


何日もまともに眠っていないような顔だった。


ヒロは唇を噛む。


「ノアから誰も入れるなって言われてる」


レオンは小さく笑った。


乾いた笑いだった。


「そうか」


そして視線を落とす。


「今は何もしない」


ヒロは眉をひそめる。


「今は?」


嫌な言葉だった。


「どういう事だよ」


レオンはしばらく黙っていた。


やがて小さく息を吐く。


「俺は伝えに来ただけだ」


なぜかぞくりと背筋が冷えた。


サクラが一歩前へ出る。


「ヒロ様」


静かな声だった。


「開けてはいけません」


だが。


ヒロは首を振った。


「無理だろ」


目の前にいるのはレオンだった。


何度も顔を合わせてきた相手だった。


ヒロはドアノブを握る。


サクラの制止を振り切った。


そして玄関の扉を開ける。


「入れよ」


だが。


レオンは動かなかった。


一歩も踏み出さない。


「……レオン?」


ヒロは眉をひそめる。


レオンは部屋の中を見る。


リビング。


ソファ。


キッチン。


見慣れた光景。


そして小さく息を吐いた。


「入らない」


「なんでだよ」


レオンは答えない。


しばらくして。


ぽつりと呟く。


「あいつが嫌がる」


ヒロは言葉を失った。


「伝言だ」


レオンの声は静かだった。


感情が抜け落ちたような声。


嫌な予感がする。


ヒロは唾を飲み込んだ。


「ノアは?」


レオンは少しだけ目を伏せる。


そして。


「……あいつは死んだ」


ヒロの思考が止まる。


何を言われたのか理解できなかった。


「……は?」


掠れた声が漏れる。


レオンは続けた。


「俺が撃った」


ヒロは言葉を失った。


意味が分からない。


分かりたくもなかった。


目の前の男が何を言っているのか。


理解したくなかった。


レオンはヒロを見ない。


ただ静かに立っていた。


まるで判決を言い渡すように。


「あいつもそれを望んだ」


短い沈黙。


そして。


「それだけだ」


レオンは踵を返す。


「待て」


ようやく声が出た。


だが。


レオンは振り返らない。


「おい!」


ヒロが叫ぶ。


返事はなかった。


そのまま歩いていく。


夕暮れの中へ。


何も説明せず。


何も残さず。


ただ最悪の言葉だけを置いて。


レオンの背中はやがて見えなくなった。


ヒロは玄関に立ち尽くしていた。




風が吹く。


夕日だけが街を赤く染めていた。


「……は?」


ようやく出た言葉だった。


理解できない。


いや。


理解したくなかった。


「あいつは死んだ」


「俺が撃った」


レオンの言葉が頭の中で繰り返される。


ヒロは首を振った。


「違う」


即答だった。


「違うよな!いつもの冗談だよな」


無理に笑う。


声が掠れた。


ヒロはポケットからスマホを取り出す。


ノアの名前をタップする。


発信。


耳に当てる。


呼び出し音は鳴らなかった。


機械的なアナウンス。


繋がらない。


もう一度掛ける。


繋がらない。


三度目。


結果は同じだった。


「出ろよ……」


小さく呟く。


当然返事はない。


ヒロはスマホを握り締めた。


その時だった。


「ヒロ様」


サクラが再び声を掛ける。


ヒロは顔を上げない。


「なんだよ」


サクラは少しだけ言葉を選ぶように黙った。


そして。


「お預かりしている物があります」


ヒロは眉をひそめる。


意味が分からなかった。


「何を」


「ノア様からです」


胸がざわつく。


だが。


今は聞きたくなかった。


聞いてしまえば。


認めてしまいそうだった。


「今はいい」


吐き捨てるように言う。


サクラは静かに頷いた。


「分かりました」


それ以上は何も言わない。


気を遣われているのだと分かった。




夜。


ヒロは一人でノアの部屋の前に立っていた。


気付けばそこにいた。


ドアノブに手を掛ける。


ゆっくり開く。


部屋の中は五日前のままだった。


ベッド。


机。


読みかけの本。


脱ぎ捨てられたスウェット。


何も変わっていない。


まるで今にも帰ってきそうだった。


ヒロは部屋を見回す。


机の上。


煙草。


ライター。


あの日の灰皿。


「……帰ってこいよ」


誰もいない部屋へ向かって呟く。


返事はなかった。


静かな部屋の中で。


時計の音だけが響いていた。


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