平和の先の不穏フラグ立ちました
※本作はギャグ・コメディ中心の作品です。
※倫理・制度・恋愛要素などは深く考えず、ゆるくお楽しみください。
レンタカーがヒロの家の前に止まる頃には、辺りはすっかり暗くなっていた。
荷物を降ろし終えた頃には、イヴもニコも眠そうな顔をしている。
「おい、ちゃんと前見ろよ」
ヒロが声を掛ける。
「見てるよー」
ニコは笑いながら答えた。
その時だった。
ノアのスマホが鳴る。
メッセージを確認したノアは、しばらく画面を見つめていた。
「どうした?」
ヒロが聞く。
「義父さんが来いって」
「今からか?」
「うん」
ノアはスマホをしまう。
「行ってくる」
ミラが服の裾を掴んだ。
「……行く」
ノアは少し笑う。
「じゃあ行きましょう」
当然のように同行するらしい。
ヒロは軽く手を振った。
「あいつによろしくな」
「言っとく」
ニコも手を振る。
「ノア君、暗いから気をつけてね」
ノアは少しだけ目を細めた。
「ニコもね」
「え?」
ニコが首を傾げる。
イヴが呆れたように言った。
「ニコ、足元ちゃんと見てよ」
「わかってるよー」
ニコは笑った。
そのままノアとミラは迎えの車へ乗り込む。
車はゆっくりと夜道へ消えていった。
海から帰った翌日。
大学から戻ったヒロは、そのままソファへ倒れ込んだ。
「疲れた……」
「おかえりなさい」
キッチンからサクラが顔を出す。
「冷たいお茶いかがですか?」
「頼む」
その時だった。
「ヒロ!」
イヴがスマホを持って駆け寄ってくる。
「見て!」
嫌な予感しかしなかった。
画面には砂浜を全力疾走するレオンが映っている。
後ろにはロケット花火。
完璧な瞬間だった。
「なんで撮ってんだよ」
「面白かったから!」
イヴは大笑いしていた。
ニコも画面を覗き込む。
「お兄ちゃん速かったね」
「速さの問題じゃねえだろ」
ヒロは呆れた。
写真は次々と切り替わる。
スイカ割り。
バーベキュー。
花火。
海。
どれも騒がしかった。
「これ見て!」
イヴが次の写真を表示する。
ヒロは固まった。
「なんだこれ」
漁師達と肩を組むミラが映っていた。
完全に馴染んでいる。
「人気者だったよね」
ニコが笑う。
「人気者ってレベルか?」
「魚いっぱい貰ってたし」
「だからってこうはならねえよ」
ヒロは頭を抱えた。
「これもありますよ」
サクラが麦茶を置きながらスマホを差し出す。
そこにはパラソルの下で眠るノアが映っていた。
缶ビールを抱えている。
「よく撮ったな」
「平和そうでしたので」
サクラは微笑んだ。
確かに平和そうだった。
「ノア君たち、まだ義父さんのところかな」
ニコが呟く。
「だろうな」
ヒロは麦茶を飲む。
「ミラも一緒だし、まあ大丈夫だろ」
イヴが写真を切り替える。
そこには線香花火を持つミラと、悔しそうな顔をしたレオンが映っていた。
「なんの写真だよ」
「勝者の写真」
「勝者?」
「ミラが言ってた」
ヒロは何となく察した。
イヴが笑う。
ニコもつられて笑った。
リビングには穏やかな時間が流れていた。
翌日。
イヴは欠伸をしながらキッチンへ向かった。
冷蔵庫から卵を取り出し、フライパンへ落とす。
ジュウッと音が鳴った。
「ニコー」
廊下へ向かって声を掛ける。
「ごはんだよー」
返事はなかった。
「ニコ?」
昨日は海だった。
まだ寝ているのかもしれない。
「ごはん冷めるよー」
もう一度呼ぶ。
やはり返事はない。
イヴは小さく息を吐いた。
「もう」
そう呟いてニコの部屋のドアを開ける。
「え……」
イヴの戸惑った声が部屋に響いた。




