昼のバーベキューは平和だった
※本作はギャグ・コメディ中心の作品です。
※倫理・制度・恋愛要素などは深く考えず、ゆるくお楽しみください。
「そろそろ昼の準備するか」
ヒロが立ち上がると、レオンも当然のように炭の前へ向かった。
バーベキューセットを組み立てるヒロの横で、レオンは手際よく火を起こしていく。
「やっぱ炭火だな」
「火遊びすんなよ」
「遊んでねえ」
レオンは真顔だった。
サクラはその間にも食材を並べていく。
肉、野菜、魚介類。
そしてミラが漁師から貰ってきた魚。
「ミラ様のお魚も調理しましょうね」
サクラが微笑むと、ミラは発泡スチロール箱を覗き込んだ。
無表情だったが、少しだけ誇らしそうに見える。
炭の準備が終わると、真っ先に網へ並べられたのは肉だった。
スペアリブ。
カルビ。
ウインナー。
レオンが満足そうに頷く。
「やっぱ肉だろ」
「野菜も焼くからな」
ヒロはすかさずトングでピーマンを置いた。
「肉の後でいい」
「よくねえよ」
即却下だった。
網の上から立ち上る香りに、イヴとニコの目が輝く。
二人とも皿を持ったまま待機していた。
「いい匂い!」
「早く食べたいね」
完全に戦闘態勢だった。
そんな中、ノアはバッグから非常食を取り出していた。
いつものブロック型。
包装を開けようとした瞬間、ヒロの手が伸びた。
「こら」
そのまま非常食を回収する。
「せっかくバーベキューしてんだから肉食え」
代わりに焼きたてのカルビを押し付けた。
ノアは露骨に眉をひそめる。
「別にこっちでいい」
「よくねえ」
ヒロは譲らない。
そのやり取りを見ていたミラが肉を一口齧った。
しばらく咀嚼してから、隣のノアへ視線を向ける。
「……ノア」
「はい」
「これおいしい」
小さな声だった。
ノアは肉を見る。
ミラを見る。
もう一度肉を見る。
「……そうですか」
そして観念したように一口食べた。
反応は薄かったが、その後は普通に食べ始めた。
二人並んで海を眺めながら肉を食べている。
もぐもぐと動く二人の頬。
妙に平和な光景だった。
「焼きそばもできるぞ!」
鉄板を指差したヒロに、真っ先に反応したのはニコだった。
「食べまぁす!」
「おっ、いい返事だな」
ヒロは嬉しそうに笑う。
「たくさん盛ってやるよ」
「えへへ」
ニコが笑うと、今度はイヴが割り込んできた。
「えー!」
「ニコずるい!」
「ヒロ! アタシも!」
「分かったから並べ」
ヒロは苦笑しながら焼きそばを皿へ盛り付けていく。
しばらくして、サクラが鍋を運んできた。
「アクアパッツァもありますよ」
イヴが目を丸くする。
「アクアパッツァ!?」
「バーベキューで!?」
「ミラ様の食材で作りました」
サクラは微笑んだ。
レオンがさっそく口に運ぶ。
「これうまいな」
その瞬間だった。
ミラがゆっくり顔を上げる。
「……まだ食べてない」
低い声だった。
レオンの箸が止まる。
「いや、味見だからな?」
ミラは何も言わない。
ただ睨みつけた。
レオンは静かに視線を逸らした。
食事もひと段落した頃。
ノアは日陰の椅子へ腰掛けたまま海を眺めていた。
ヒロが近付く。
「どうした?」
ノアは視線を海へ向けたまま答える。
「なんか平和だなって」
ヒロの動きが止まった。
嫌な予感しかしない。
「おい」
ノアが振り返る。
「なに?」
「そういうこと言うな」
ヒロは真顔だった。
「今日はこのまま平和で終われ」
心からの願いだった。




