とりあえず今回も無事解決しました。
※本作はギャグ・コメディ中心の作品です。
※倫理・制度・恋愛要素などは深く考えず、ゆるくお楽しみください。
ミラは消えた。
いつの間にか。
気付けば姿がなかった。
ヒロは額を押さえる。
「またかよ……」
ノアはパラソルの下で缶ビールを開けた。
プシュッと気の抜ける音が響く。
「義姉さんはああ見えて大人だから大丈夫」
そう言って一口飲む。
ヒロは即座にツッコんだ。
「その理屈で安心できたことが一度でもあったか?」
ノアは少し考える。
「まだないね」
「だろうな! 今後もねえよ!」
ヒロが叫ぶ。
しかしノアは何かを思い出したように顔を上げた。
「あっ」
嫌な予感しかしない。
「この海岸で何人か死ぬかもね」
ヒロは頭を抱えた。
「その心配をしてんだよ!」
レオンは立ち上がると軽く準備運動を始めた。
肩を回し、首を鳴らし、足を伸ばす。
完全に運動前の動きだった。
「また走り込みだな」
「なんで嬉しそうなんだよ!」
ヒロが怒鳴る。
レオンは真顔のまま答えた。
「砂浜は足腰に効く」
「聞いてねえ!」
ヒロは天を仰ぐ。
「くそっ……もうバカしかいねえ!」
その時、サクラがそっと近付いてきた。
「ヒロ様」
優しい声だった。
「私はここにいますので」
ヒロは少しだけ救われた気分になる。
「頼む。悪いな」
「お任せください」
サクラは微笑んだ。
イヴは元気よく立ち上がる。
「ニコ! 私たちは海行こ!」
ニコも嬉しそうだった。
「いっぱい泳ごうね!」
「うん!」
二人は手を繋いで波打ち際へ向かう。
ヒロは慌てて声を掛けた。
「おーい!」
振り返った二人へ指を向ける。
「ちゃんと準備運動しろよ!」
「はーい!」
イヴが元気よく返事をする。
だが準備運動をする気配はない。
ヒロはもう何も言わなかった。
言っても無駄だと学習済みだった。
こうして目的はそれぞれ決まった。
イヴとニコは海水浴。
サクラは荷物番。
レオンはミラ捜索という名の砂浜トレーニング。
ノアはビール。
そしてヒロは、問題が起きる前に問題を探す仕事だった。
砂浜を駆け回るヒロとレオン。
「ヒロ!」
横を走りながらレオンが声を上げる。
「もっと足を上げた方が効くぞ!」
ヒロは珍しく無視した。
返事をする気力すら残っていない。
周囲を見回しながら砂浜を進んでいると、不意に視界の先で見覚えのある黒髪が揺れた。
砂浜の奥。
漁業船が並ぶ港。
そこにミラがいた。
当然のように船へ乗り込み、周囲の日焼けした男達と話している。
どう見ても漁師だった。
しかも妙に馴染んでいる。
「……嘘だろ」
ヒロが呟く。
レオンも視線を向けた。
「船か」
そう言って肩を回す。
「次は泳ぎだな」
「危ないから船と競うな!」
ヒロが即座にツッコんだ。
レオンは少し残念そうだった。
港からは漁師達の笑い声が聞こえてくる。
ミラも普通に会話へ混ざっていた。
あまりにも自然だったので、むしろ自分達の方が部外者に見える。
ヒロは深いため息を吐いた。
「……帰るか」
「そうだな」
レオンも頷く。
二人は踵を返した。
助けを求められている様子もなく、危険な雰囲気もない。
なら放っておいても問題ないだろう。
そう判断した二人は、何事もなかったかのように設営場所へ戻っていった。




