うちの奴隷はやればできる
※本作はギャグ・コメディ中心の作品です。
※倫理・制度・恋愛要素などは深く考えず、ゆるくお楽しみください。
その後も。
ヒロとレオンは振り回され続けていた。
ミラが消える。
探す。
見つかる。
気が付けばまた消えている。
探す。
見つかる。
その繰り返しだった。
ノアはその度に、
「義姉さん楽しそうですね」
などと言っている。
完全に他人事だった。
当事者のはずなのに。
気付けば昼過ぎ。
浴室の扉を買いに来たはずなのに、結局何も買えていなかった。
ヒロは疲れ切った顔で出口へ向かう。
「……もう帰るか」
レオンも無言で頷いた。
異論はなかった。
帰り道。
ヒロは深いため息を吐く。
「高くつくが管理会社に連絡するしかねえな」
浴室の扉は壊れたまま。
流石に放置はできない。
するとノアが手を挙げた。
「ヒロ」
「そんなに言うなら僕が直そうか?」
ヒロは眉をひそめる。
「だから改造は――」
「違うよ」
ノアは首を振った。
「扉そのものを直す」
ヒロは思わず足を止める。
「できるのか?」
「うん」
当然のような返事だった。
「なんでそんなことできるんだよ」
「なんか大事そうだったし」
ノアはあっさり答える。
ヒロは少し考えた。
管理会社。
修理費。
見積もり。
財布事情。
そして目の前のノア。
不安しかない。
だが。
「……じゃあ頼むわ」
「了解」
ノアは軽く頷いた。
家に帰ると、ノアはすぐに壊れた扉の前へ向かう。
蝶番。
ネジ。
木片。
散らばった残骸を次々と回収していく。
「レオン」
「運ぶの手伝って」
「嫌な予感しかしねえ」
「運ぶだけ」
結局。
レオンが運ばされた。
地下室へ。
準備が終わると、ノアは立ち上がる。
「じゃあ、しばらくかかるから」
そう言ってミラを見る。
「義姉さんのことよろしく」
リビングが静まり返った。
レオンが固まる。
「……嘘だろ?」
本気で嫌そうだった。
ヒロはそっと目を逸らす。
サクラは何事もなかったように紅茶を淹れ始めた。
ミラは静かにソファへ座っている。
空気だけが重かった。
一時間後。
地下室の扉が開いた。
「できたよ」
ノアが顔を出す。
その後ろからレオンが浴室の扉を運んできた。
ヒロは思わず目を見開く。
綺麗だった。
蝶番は新品のように輝き、表面の傷も見当たらない。
むしろ壊れる前より状態が良い。
「すごいな……」
思わず声が漏れる。
「どうやったんだ?」
「溶接したりかな」
ノアは簡単そうに答えた。
「どこで習ったんだ?」
「義姉さんの手伝い」
嫌な予感がした。
ミラが口を開く。
「ノア」
「拷問の手伝い上手」
ヒロの動きが止まる。
「人を溶接すんな!」
全力で叫んだ。
ミラは首を傾げる。
ノアも首を傾げる。
どうやら何がおかしいのか分からないらしい。
レオンだけは何も言わなかった。
聞こえなかったことにした。
そのまま黙々と扉を取り付けていく。
しばらくして。
「できたぞ」
レオンが手を離す。
浴室の扉は元通りになっていた。
いや。
元通り以上だった。
新品同然である。
ヒロはようやく肩の力を抜いた。
「助かった」
心からそう思った。
そしてノアを見る。
「ありがとうな」
ノアは一瞬きょとんとする。
予想していなかったらしい。
それから、得意げに胸を張る。
久しぶりのドヤ顔だった。




