ホムセンは拷問器具の宝庫
※本作はギャグ・コメディ中心の作品です。
※倫理・制度・恋愛要素などは深く考えず、ゆるくお楽しみください。
朝食を終えた後。
全員でホームセンターへ向かう準備をしていた。
ヒロは一人、浴室の前に立つ。
壊れた扉。
蝶番まで見事に吹き飛び、もはや修理ではなく交換が必要な状態だった。
ヒロはそっと扉を撫でる。
「……長い付き合いだったな」
感慨深かった。
数年間、毎日見てきた扉である。
ノアが後ろから覗き込んだ。
「物はいずれ壊れるからね」
達観した声だった。
ヒロはゆっくり振り返る。
「壊した奴が言うんじゃねえ!」
即座に怒鳴った。
ノアは不満そうに頬を膨らませる。
「だから僕は壊してないって」
「うるせえ!」
「もう行くぞ!」
ホームセンター。
広い店内には様々な商品が並び、休日ということもあってそこそこ賑わっていた。
ヒロ達は目的のDIYコーナーへ向かう。
浴室の扉を探すためだ。
ヒロは並ぶ商品を見ながら唸る。
「もっと普通のやつないのか」
目の前には洒落た扉がずらりと並んでいた。
ガラス入り。
木目調。
ステンドグラス。
妙に高級感のあるデザインばかりだ。
レオンが腕を組む。
「今はこういうのが普通なんじゃないか?」
「そうなのか?」
ヒロは首を傾げた。
時代に置いていかれている気がする。
その時だった。
ノアが周囲を見回す。
「あれ?」
嫌な予感がした。
「義姉さんは?」
空気が凍る。
ヒロとレオンが同時に青ざめた。
「おい!」
ヒロが勢いよく振り返る。
「ちゃんと見てろって言っただろ!」
ノアは首を傾げた。
「いや、ヒロが話しかけたから」
「そんな一瞬で消えるのか!?」
「義姉さん小さいから」
「理由になってねえ!」
ヒロは頭を抱えた。
レオンはすでに周囲を警戒している。
ミラを放置するとろくなことにならない。
その認識だけは二人とも一致していた。
慌てて店内を探し回る。
園芸コーナー。
いない。
家具コーナー。
いない。
照明コーナー。
いない。
そして。
工具コーナーで発見した。
ミラは商品棚の前に立ち、真剣な顔で何かを見つめていた。
ヒロは駆け寄る。
「勝手にどっか行くな!」
ミラは振り返る。
そして無言で商品を指差した。
「……これ使えそう」
小さな声だった。
ヒロは視線を向ける。
工具セット。
電動ドリル。
嫌な予感しかしない。
ヒロの顔が引きつった。
「使うな!」
即座に却下する。
「想像させるな!」
ミラは少し不満そうだった。
「便利そう」
「便利に使う気がしねえんだよ!」
ヒロが叫ぶ。
ノアは興味深そうに棚を眺めていた。
そして別の商品を見つける。
「義姉さん」
「こっちも楽しそうですよ」
指差した先には業務用グルーガン。
ミラの視線が動く。
「……面白そう」
「やめろー!」
ヒロの悲鳴がホームセンターに響いた。
ノアは純粋に楽しそうだ。
ミラも少しだけ興味を示している。
最悪の組み合わせだった。
ヒロは助けを求めるように振り返る。
「レオン!」
返事はない。
いない。
……と思ったがいた。
工具コーナーから五メートルほど離れた場所で、レオンは静かに距離を取っていた。
完全に避難している。
「おい!」
ヒロが怒鳴る。
レオンは静かに首を横に振った。
「俺を呼ぶな!」
「なんでだよ!」
「巻き込まれたくない」
真顔だった。
ヒロは天を仰ぐ。
この中で常識人は自分だけだった。
そう思っていた。




