姉弟で一緒に寝るのってありなのか?
※本作はギャグ・コメディ中心の作品です。
※倫理・制度・恋愛要素などは深く考えず、ゆるくお楽しみください。
サクラがリビングへ布団を敷いていく。
ふかふかだった。
来客用としては十分すぎる。
ミラはその前でしゃがみ込み、興味深そうに指で布団を押した。
沈む。
もう一度押す。
やっぱり沈む。
少しだけ目を見開いた。
「……ふわふわ」
満足そうだった。
ノアはそんな様子を眺めながら頷く。
「別に僕のベッドでも良かったのに」
レオンが勢いよく立ち上がった。
「お前らはもう二人きりになるな!」
必死だった。
ミラはゆっくりとレオンを見る。
無表情。
じーっ。
圧があった。
レオンは耐えられず視線を逸らす。
「と、とにかく俺は寝る!」
「じゃあな!」
逃げた。
完全に逃げた。
部屋の扉が閉まる音が響く。
ヒロはため息を吐く。
「何なんだあいつ……」
ミラは気にする様子もなく布団へ潜り込んだ。
すっぽり埋まる。
小柄なせいで布団の方が大きく見える。
「……ふかふか」
よほど気に入ったらしい。
ノアも立ち上がる。
「じゃあ僕も――」
「ダメだ!」
ヒロが即座に止める。
ノアが固まった。
「なんで」
「自分の部屋で寝ろ!」
「えー」
露骨に不満そうだった。
だがヒロは折れない。
今日は折れない。
絶対に折れない。
ノアはしばらく抵抗しようとしたが、諦めたように肩をすくめた。
「分かったよ」
そう言って自分の部屋へ戻っていく。
ヒロはその背中を見送った。
ミラはすでに布団の中だった。
ぴくりとも動かない。
寝付きが異常に早い。
「じゃあな」
ヒロは軽く手を上げる。
「おやすみ」
返事はなかった。
もう寝ているのかもしれない。
ヒロも自室へ向かった。
次の日。
朝。
ヒロは欠伸をしながらリビングへ向かう。
そして固まった。
布団が空だった。
「……は?」
ミラがいない。
一気に目が覚める。
嫌な予感しかしなかった。
ヒロは慌てて立ち上がる。
真っ先に向かったのはノアの部屋だった。
勢いよく扉を開ける。
そこにいた。
ベッドの端から細い足がはみ出している。
ヒロは無言で近付いた。
布団を掴む。
そして。
勢いよく引っ剥がした。
長い黒髪。
金色の髪。
ノアに抱きついて眠るミラだった。
妙に絵になっていた。
「おい」
ヒロの声が低くなる。
ノアが薄く目を開けた。
「……まだ眠い」
「お前なんでミラと寝てんだよ」
「え?」
ノアは少し考える。
そして再び目を閉じた。
「義姉さんから来たみたい」
「僕は無実」
「起きろ!」
ヒロが怒鳴る。
ノアは聞いていない。
むしろミラの黒髪を指先で触っていた。
「お前!」
ヒロは指を差す。
「自分の姉だろ!」
「ちゃんと距離感を保て!」
ノアは首を傾げた。
意味が分からないらしい。
その時だった。
ヒロの声でミラが目を覚ます。
ゆっくりと瞼を開く。
ぼんやりした視線が動く。
そして。
すぐ隣のノアを見る。
「……おはよ、ノア」
小さな声だった。
そのまま自然な動作でノアの頭を撫でる。
優しく。
慣れた手つきで。
ノアは気持ち良さそうに目を細めた。
完全に弟扱いだった。
ヒロは少し安心する。
少なくとも変な雰囲気ではない。
ただ仲の良い姉弟だった。
たぶん。
「……最初から自分の布団で寝ろよ」
ヒロは心の底からそう思った。
その直後。
「おはようございま――」
部屋の前を通りかかったサクラが中を覗く。
固まる。
ノア。
ミラ。
ベッド。
抱きつき状態。
数秒の沈黙。
「失礼しました」
静かに扉が閉まった。
「あっ」
ヒロが振り返る。
ノアは欠伸をした。
ミラは再び目を閉じる。
誰も気にしていない。
「違うからな!」
ヒロの叫びだけが廊下に響いた。




