姉弟で風呂は家庭による……のか?
※本作はギャグ・コメディ中心の作品です。
※倫理・制度・恋愛要素などは深く考えず、ゆるくお楽しみください。
ミラは戻ってきた。
どこかスッキリしたような顔をしている。
ヒロはそのまま自分の席へ戻るのだと思った。
だが、ミラは迷いなくノアの方へ歩いていき、そのまま当然のようにノアの膝の上へ腰を下ろした。
「おい」
思わずヒロの口から声が漏れる。
「何してんだお前ら」
ノアはまったく悪びれる様子もない。
「抱っこ」
「抱っこじゃねえだろ」
即座にツッコむヒロ。
しかしノアは気にすることなくミラの肩へ顎を乗せた。
「義姉さんがいると落ち着くんだよ。あったかいし」
ミラも小さく頷く。
「高さもちょうどいい」
「何なんだよ、その理由」
ヒロは頭を抱えた。
レオンはもう何も言わない。
関わらない方がいい。
本能がそう告げていた。
しばらくして、ノアがぽつりと口を開く。
「……義姉さん、泊まっていきますか?」
その瞬間。
「待て」
「待て」
ヒロとレオンの声が見事に重なった。
だが二人が止めるより早く、ミラはこくりと頷いていた。
どうやら本人の中ではすでに決定事項だったらしい。
すると、そのやり取りを聞いていたサクラが立ち上がる。
「では、お布団の準備をしてきますね」
にこりと微笑み、そのまま奥の部屋へ消えていった。
「だから何で俺の家なのに勝手に話が進むんだよ……!」
ヒロは頭を抱えた。
レオンは遠い目をする。
「それは……いつものことだな」
妙に悟ったような口調だった。
そんな二人をよそに、ミラはノアの服の裾を軽く引っ張る。
「……ノア」
「はい」
「お風呂、入ろ」
「いいですよ」
「ダメだろ!」
ヒロのツッコミが炸裂した。
ノアは首を傾げる。
「姉弟なら普通でしょ」
その瞬間、レオンが勢いよく立ち上がった。
「ヒロ!」
「なんだよ!」
「俺とニコが一緒に風呂入ってたらおかしいだろ!」
ヒロは少し考える。
「……家庭によってはあるんじゃないか?」
「ねえよ!」
レオンが即答した。
「お前だってユイと入らねえだろ!」
「うちは入んねえな」
「俺んとこもだよ!」
レオンは机を叩く。
「普通は入らねえんだよ!」
必死の説得だった。
ノアは腕を組んで少し考える。
「そう言われると確かに珍しいかも」
「今さらか!」
ヒロが叫ぶ。
レオンはさらに追撃した。
「しかもこいつら二人にすると碌なことにならないぞ!」
ミラは無表情のままノアへ寄りかかり、ノアは当然のようにその頭を撫でている。
ヒロはそんな二人を見た。
仲が良い。
それは間違いなかった。
久しぶりに再会した姉弟だ。
ここで水を差すのも野暮な気がする。
「……まあ」
ヒロは諦めたようにため息を吐いた。
「危ないことだけはすんなよ」
結局、折れたのはヒロだった。
ノアは満足そうに頷き、ミラも小さく頷く。
相変わらず無表情だったが――
ほんの少しだけ。
口元が緩んだように見えた。
気のせいかもしれない。
それでもヒロは、そう見えた。




