無事、アカウントは停止されました
無事――
アカウントは停止された。
「停止されてるじゃねえか!」
ヒロが叫ぶ。
佐伯は青ざめていた。
「終わった……」
「俺の配信人生終わった……」
だが。
ノアはPCをカタカタと叩きながら平然としていた。
「大丈夫だよ」
数分後。
通知が鳴る。
アカウント復旧。
「戻った」
「戻るな!!」
ヒロのツッコミが飛ぶ。
「いや犯罪だろ!多分やってるよな!」
「助かった!」
佐伯はノアの手を握った。
「ノアありがとうな!」
「危うく食い扶持がなくなるところだった!」
「感謝するとこじゃねえ!」
ヒロだけが正常だった。
琥珀はしゅんと肩を落としている。
「ご主人様……ごめんなさい」
「いいんだ!」
佐伯は琥珀の肩を叩いた。
「間違いは誰にでもあるからな」
やけに良い声だった。
少し格好良かった。
だから余計に腹が立つ。
「お前も反省しろ」
ヒロは真顔で言った。
ノアはPCの画面を確認すると、今度はスマホ取り出した。
どこかへ連絡する。
「流石に義父さんも怒りそうかなって」
「アカウント停止くらいで怒るのかよ」
ヒロが首を傾げる。
ノアは少し考えた。
「第二の人生だからね」
「義父さんには余生を楽しんで欲しいよ」
「余生長くねえか?」
ヒロが呟いた。
そのとき。
ノアのスマホが鳴った。
「あ、義父さん」
「うん。ハッキング」
「ついでに内部情報も弄っといたから」
禍々しい会話に必死で耳を塞ぐヒロだった。
このアルヴァルトとの窃盗談義は、無事――ではないがバズった。
佐伯と『天使な窃盗メイド琥珀』の名前は、一気に広まることになる。
「なんとかバズって良かったな!」
佐伯は満面の笑みだった。
「はい! ご主人様!」
琥珀も元気よく返事をする。
ヒロは二人を見て呟いた。
「こいつら肝座りすぎだろ……」
ノアは紅茶を飲みながら答える。
「強メンタルじゃないと配信でやっていけないからね」
妙に納得してしまった。
そして。
ノアは何かを思い出したように口を開く。
「それで次の義父さんとのコラボだけど――」
「……もうやめてくれ」
ヒロは即答した。
誰よりも疲れている。
いつも通りの胃痛。
ポケットには胃薬。
ボロボロなのはヒロだけだった。




