大人しくスイーツの話だけしとけ!
※本作はギャグ・コメディ中心の作品です。
※倫理・制度・恋愛要素などは深く考えず、ゆるくお楽しみください。
配信が始まる。
『天使と悪魔だ』
『白い子かわいい』
『悪魔メイドの圧がすごい』
『どっちも顔が良すぎる』
コメントが流れていく。
佐伯が笑顔でカメラを見る。
「本日は特別配信です!」
「アルヴァルトさんに来ていただきました!」
アルヴァルトは軽く会釈した。
『イケおじきた』
『顔が良い』
『声が良い』
『もう勝ち』
ヒロは少し離れた場所で頭を抱える。
「なんなんだよこの人気……」
テーブルには様々な洋菓子が並ぶ。
ショートケーキ。
フルーツタルト。
モンブラン。
マカロン。
アルヴァルトはその中から一つを選んだ。
「今日はこれにしよう」
フォークが入る。
断面が綺麗だった。
『美味しそう』
『飯テロ』
『その店どこ?』
『食べたい』
アルヴァルトは一口食べる。
静かに目を閉じた。
「悪くない」
コメント欄が沸く。
『悪くない出た』
『高評価きた』
『実質100点』
『基準厳しいw』
アルヴァルトは頷く。
「甘さを抑えている」
「それでいて果物の香りが死んでいない」
「よく考えられているね」
真面目だった。
本当に真面目だった。
『解説わかりやすい』
『食レポうまい』
『お腹空いてきた』
その横で。
悪魔メイドのノアが紅茶を注ぐ。
手際が良かった。
『ノアくんかわいい』
『店員さんプロだ』
『メイド似合う』
『義理の息子だっけ?』
ノアはコメントを見る。
「義理の息子だよ」
『本人認めたw』
『情報が強い』
『家族仲良いな』
ヒロはその言葉に少しだけ安心した。
今日は平和かもしれない。
そう思った。
だが。
後半の雑談コーナーで雲行きが怪しくなる。
『琥珀ちゃんの特技は?』
コメントが流れた。
「特技?」
琥珀は少し考える。
そして。
目の前に置かれていた銀のカトラリーを手に取った。
次の瞬間。
消えた。
「え?」
佐伯が固まる。
コメント欄も一瞬止まった。
さらに。
琥珀は袖を軽く払う。
すると別のスプーンも消える。
フォークも消える。
ナイフも消える。
『!?!?!?』
『今何した!?』
『マジック!?』
『すご』
『プロじゃん』
反応は上々だった。
琥珀は少し得意げになる。
「簡単ですよ」
そう言いながらテーブルの上の物を次々と消していく。
ヒロは嫌な汗をかいた。
「おい!琥珀」
「その辺にしとけ」
届かなかった。
アルヴァルトの目が細くなる。
興味を持った時の顔だった。
「素晴らしい」
アルヴァルトは拍手する。
「これは……盗みの技術だね」
ヒロは天を仰いだ。
コメント欄がざわつく。
『盗み!?』
『え?』
『今なんて?』
アルヴァルトは気にしていない。
「どこの組織にいたんだい?」
琥珀は少し嬉しそうだった。
認められた気がした。
「色々です」
「財布なら得意ですよ」
「あと時計とか」
ヒロは必死に手で合図を送る。
伝わらない。
琥珀は完全に乗っていた。
「相手の重心を見るんです」
「それで――」
スリの技術解説が始まる。
アルヴァルトは真面目に聞いている。
「なるほど」
「合理的だ」
「参考になる」
「参考にするな!!」
ヒロの叫びが飛んだ。
コメント欄は大混乱だった。
『通報案件で草』
『配信で話す内容じゃない』
『面白すぎる』
『アウトだろwww』
その時。
ノアが静かに口を開く。
「義父さん」
「そろそろ止めないとアカウント停止されちゃいます」
アルヴァルトは首を傾げた。
「そうなのかい?」
「はい」
「世知辛いな」
アルヴァルトは少し残念そうに頷く。
佐伯も慌てて身を乗り出した。
「琥珀」
「すごいけど少し静かになろうな」
「なんで?」
「今すごく盛り上がってるのに」
「だからだよ!」
配信中もヒロのツッコミは冴えまくっていた。
そして全て世界に流れていた。




