常連ヅラしたインフルエンサーは早く帰れ
※本作はギャグ・コメディ中心の作品です。
※倫理・制度・恋愛要素などは深く考えず、ゆるくお楽しみください。
ヒロの店は、とんでもないことになっていた。
開店前から行列。
店の前にはスマホを構えた客までいる。
「本当にここ!?」
「配信で見た子いるかな」
「義理息子ってマジ?」
聞こえてくる会話に、ヒロは頭を抱えた。
「なんでこんなことになってんだよ……」
店内も満席だった。
いつもの常連。
配信を見て来た客。
完全に野次馬の連中。
全部入り混じっている。
そしてその中心には――ノア。
いつものメイド服姿でチェキ対応していた。
「ノアくんこっちお願いします!」
「次チェキ二枚!」
「笑ってください!」
「ポーズお願い!」
行列ができている。
前より増えていた。
明らかに増えていた。
ヒロは恐る恐る呟く。
「……前よりやばくないか?」
レオンが静かに答える。
「配信効果だな」
「嬉しくねえよ……」
ヒロは遠い目をした。
そのときだった。
カラン。
ドアベルが鳴る。
ヒロは反射的に入口を見る。
「すみません、今満席――」
そこまで言って止まった。
立っていたのはアルヴァルトだった。
一瞬。
店内が静まり返る。
次の瞬間。
「え!? 本物!?」
「配信の人だ!!」
「イケおじ来た!!」
悲鳴と歓声が一気に広がった。
スマホを向ける客までいる。
ヒロは頭を抱えた。
「なんで来たんだよ!!」
アルヴァルトは穏やかに微笑む。
「コーヒーでも飲もうと思ってね」
「いつものを一つもらえるかな」
「常連ヅラすんな!!」
アルヴァルトは気にした様子もない。
むしろ少し楽しそうだった。
その横ではノアが普通に手を振っている。
「義父さん」
「ノアくんのお義父さん!?」
「待って情報量多い!」
さらに店内がざわつく。
ヒロの胃がキリキリと痛み始めた。
「……とにかく一回こっち来い!」
ヒロはアルヴァルトの腕を掴む。
そのまま店の奥へ引っ張っていった。
「おお」
「裏側を見るのは初めてだ」
「見学ツアーじゃねえんだよ!」
事務所へ押し込む。
狭い部屋。
机。
書類。
備品。
完全に裏方だった。
アルヴァルトは周囲を見回しながら感心したように頷く。
「客をこんなところへ通すとは……」
「接客としては感心しないな」
「ああ、正論だよ!!」
ヒロが叫ぶ。
「仕方ねえだろ!!」
「店内がパニックなんだよ!!」
叫びは止まらなかった。
アルヴァルトは静かにコーヒーとケーキのセットを待っていた。




