美形しかいないのに空気が悪すぎる
※本作はギャグ・コメディ中心の作品です。
※倫理・制度・恋愛要素などは深く考えず、ゆるくお楽しみください。
地獄の食事会が始まった。
通された部屋には、大きなテーブルが置かれていた。
長い。
やたら長い。
並ぶ椅子だけで圧を感じる。
使用人たちが静かに動き、それぞれの席へ案内していく。
ヒロは落ち着かないまま席についた。
反対側にはルシアン。
だが、その隣に座る面々を見た瞬間──ヒロは帰りたくなった。
片方は短髪の男。
傷だらけの指。
テーブルに足を乗せ、堂々と行儀を無視している。
いかにも喧嘩慣れしていそうな男だった。
もう片方は、ウェーブした髪を後ろで一つにまとめている。
垂れ目。
人懐っこそうな笑顔。
なのに、その視線だけ妙に冷たい。
レオンとヒロを、ニコニコしたまま眺めていた。
そして、一番奥。
小柄な少女が一人だけ座っている。
年齢は中学生くらいに見えた。
黒いゴシックドレス。
だが、その少女だけは一度もこちらを見ない。
ルシアンを含めた四人。
共通していることが一つだけあった。
全員、顔が良すぎる。
ヒロは小さくレオンへ顔を寄せた。
「……アルヴァルトの子供って言ってたよな?」
「みんな顔の系統違くないか?」
レオンは無表情のまま答える。
「あまり考えるな」
「疲れるだけだ」
小声だった。
だが妙に説得力がある。
ヒロはエリザの話を思い出していた。
ノアが食事を取れなくなった原因。
次男。
おそらく――あの態度の悪い男だ。
思わず視線を向けてしまう。
その瞬間。
「てめえ、何見てんだ?」
怒鳴り声が飛んだ。
ヒロの肩が跳ねる。
ルシアンがすぐに口を開いた。
「カイ。やめろ」
短髪の男――カイが舌打ちする。
「チッ」
「座れ」
ルシアンの低い声。
カイはヒロへ中指を立てながら椅子へ座った。
空気が、悪い。
ルシアンが静かに頭を下げた。
「悪かった」
部屋が静まり返る。
その空気のまま、ルシアンが口を開いた。
「先に紹介しておこう」
まず、カイを見る。
「次男のカイだ」
カイは返事の代わりに舌打ちした。
ルシアンは慣れた様子で次へ進む。
「三男のライト」
ウェーブ髪の男が、すっと立ち上がる。
動きが綺麗だった。
流れるように頭を下げる。
「初めまして。早瀬紘さん」
ヒロの動きが止まる。
「……何で俺のフルネーム……」
ルシアンが淡々と答えた。
「ライトは情報屋が本職なんだ」
ぞくり、と背筋が冷える。
ライトはにこりと笑った。
「踊ったりするお店もやってるから、遊びに来てよ」
「は、はは……」
絶対に行きたくない。
ルシアンは最後に、一番奥を見る。
「ミラだ。……近づかない方がいい」
紹介が終わる。
あまりにも雑だった。
ヒロは気を使って少女へ声をかけた。
「ヒロです。よろしく」
ミラは動かない。
返事もない。
完全に無視だった。
ヒロは静かに思った。
(まともなの、ルシアンだけじゃねえか。)
(帰りてえ……!!)




