奴隷が用意した新築祝いが俺
※本作はギャグ・コメディ中心の作品です。
※倫理・制度・恋愛要素などは深く考えず、ゆるくお楽しみください。
アルヴァルトとノアがこちらへ歩いてくる。
それだけで、部屋の空気が張り詰めた。
だが――
「やあ。来てくれて嬉しいよ」
アルヴァルトが穏やかに笑った瞬間、空気はいつもの調子へ戻る。
レオンがすぐに立ち上がった。
「本日はお招きいただき、感謝いたします」
あまりにまともな対応だった。
ヒロは思わず横目でレオンを見る。
(ちゃんと社会人できるんだな……)
そんなことを考えつつも、ヒロには聞かなければならないことがあった。
「いや俺なんで呼ばれたんだよ!」
「組織の幹部だけじゃないのか!?」
アルヴァルトは穏やかな笑みを崩さない。
「ノアが世話になっているからね」
「それに――」
アルヴァルトは満足そうに部屋の中央へ視線を向けた。
「とても良い品をありがとう」
珍しく目を細めて笑う。
ノアも自然に続ける。
「ヒロの新築祝い、こっちに送ってもらったから」
まるで何でもないことのように言う。
「ああ。ノアありが――」
そこまで言って。
ヒロは止まった。
二度見する。
部屋の中央。
そこに置かれていたのは――
自分の銅像だった。
しかも金。
銅ですらない。
全身ピカピカの金。
そして半裸。
妙に筋肉だけリアルだった。
「……これ、ユイのデッサンのやつ……」
ヒロの顔が引きつる。
ゆっくりとノアを見る。
ノアは少し得意げだった。
「金の方が豪華かなって」
「ノアー!!!」
ヒロの叫び声は、義父アルヴァルトの新居に響き渡った。
しばらくして。
騒ぎも落ち着いた頃。
アルヴァルトがワインを片手に口を開いた。
「この後、家族でちょっとした集まりがあるんだが」
穏やかな笑み。
「どうかな?」
ヒロは反射的に断ろうとした。
だが、その前にレオンをちらりと見る。
レオンは無言だった。
嫌な予感しかしない。
アルヴァルトは自然な動作でレオンの肩に手を置く。
「レオンも、もちろん出るだろう?」
レオンは小さく目を伏せた。
「ああ」
静かな返事だった。
ヒロは察する。
――断れないやつだ、これ。
「……わかったよ」
諦め半分で答える。
するとアルヴァルトは嬉しそうに微笑んだ。
「君を家族に紹介したかったんだ」
その隣で。
ノアがニヤニヤ笑っている。
完全に面白がっていた。
ヒロは嫌そうな顔のまま視線を逸らす。
「……エリザはどうするんだ?」
エリザはすぐに答えた。
「私はノアのお世話よン♡」
「お色直しがあんの♡」
「お色直し……?」
「そんな結婚式じゃねえんだから……」
ヒロが乾いた笑いを漏らす。
その横で、レオンが小さくため息をついた。
「似たようなもんだろ」
ぼそりと呟く。
ヒロの動きが止まる。
「……どういうことだ」
「来れば分かる」
レオンはそれだけ言った。
ヒロは静かに天井を見上げた。
――帰りたい。




