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貧乏大学生が酔った勢いで奴隷契約したら、美少女だと思った相手が男でヤニカスだった件  作者: しけもく
奴隷を買いに行こう

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199/201

奴隷街の管理者、普通にまともだった件

※本作はギャグ・コメディ中心の作品です。

※倫理・制度・恋愛要素などは深く考えず、ゆるくお楽しみください。

中央の建物を指差し、ノアが言う。


「ここだよ」


人の密度が一段違う。


熱気が重い。


格子のついた部屋が並び、その中で奴隷たちが思い思いに過ごしていた。


笑っている。


話している。


手を振っている。


――全員、一斉にこちらを見る。


ヒロの足が止まる。


「……なんだよこれ」


奴隷たちが、にこりと笑う。


手を振ってくる。


(俺……?)


背中がざわつく。


「ヒロばっかずりぃ」


佐伯が横から覗き込もうとする。


「押すなって!」


押し返す。


ぼそりとレオンが言う。


「ヒロはこっちじゃ有名人だからな」


「は? 今なん――」


最後まで言わせなかった。


ノアの肘が、レオンの鳩尾に入る。


「ぐっ……!」


鈍い音。


咳き込むレオン。


ノアは何もなかった顔で言う。


「早く行こ」


「いや今の!?」


無視。


受付を素通りする。


誰も止めない。


ただ、視線だけが追ってくる。


奥の扉の前でノアが止まる。


コンコン、と軽くノック。


返事はない。


「いないのか?」


ヒロが言う。


ノアは肩をすくめた。


「仕方ないね」


ポケットから細い針金を取り出す。


カチャカチャと鍵穴をいじる。


数秒。


カチ。


開いた。


「何してんだよ!」


「ピッキング」


「犯罪だろ!」


聞いていない。


そのまま入る。


「待てって!」


慌てて続く。


中は静かだった。


さっきまでの喧騒が嘘みたいに消えている。


広い。


机が一つ。


無駄がない。


その奥に――


男がいた。


黒いスーツ。


姿勢が綺麗すぎる。


そして、露骨に面倒そうな顔。


ノアは迷いなく近づく。


「義兄さん。奴隷見せて」


軽い。


軽すぎる。


くるりと振り返る。


「あ、ルシアン義兄さん」


「軽すぎだろ!」


ヒロが即ツッコミ。


ルシアンはゆっくり息を吐いた。


立ち上がる。


歩いてくる。


足音がやけに静かだ。


「愚弟がお世話になっているな。ルシアンだ」


手が差し出される。


握手。


順番に。


ヒロは思う。


(……まともだ)


横でレオンが小さく言う。


「まともだろ」


頷く。


即同意。


ルシアンが視線を移す。


「それで……奴隷が欲しいそうだが」


佐伯が即答する。


「可愛くて頭良くて配信いけるやつあります?」


「おい!」


ヒロが肘で小突く。


ルシアンは淡々と返す。


「奴隷の金額は知っているか?」


佐伯がヒロを見る。


「いくらだった?」


「全財産だよ!」


「具体的に」


「知らねえよ!契約書にそう書いてあったんだよ!」


「通帳も空だったしな」


「怖すぎだろ」


ルシアンは続ける。


「最低五千万」


一拍。


「税抜だ」


「裏なのに消費税あんのかよ!?」


ヒロが叫ぶ。


佐伯も引く。


「高っ……」


ルシアンが言う。


「なら中古を回るか」


「中古!?」


ヒロが反応。


ノアが口を挟む。


「未登録、あるでしょ」


空気が少し変わる。


ルシアンの目が細くなる。


「……あるにはあるが」


「一人ちょうだい」


軽い。


ノアは紙を差し出す。


「代わりにこれ」


受け取る。


目を通す。


沈黙。


一秒。


二秒。


――口元が、わずかに緩む。


「……いいだろう」


紙を置く。


少し考えるように目を細める。


「一人、返品された個体がいる」


軽い言い方。


「それでいいか?」


「返品って何だよ……」


ヒロが即ツッコミ。


「未登録よりはマシだ」


手を上げる。


「連れてこい」


短い指示。


すぐに扉が開く。


連れてこられた。


小柄な少女。


整った顔。


静かすぎる。


「……」


ヒロが言葉を失う。


「可愛い!」


佐伯は即決。


「この子にしよう!」


「待て!」


ヒロが止める。


「見た目で決めるな!」


レオンがぼそっと言う。


「説得力がない」


「うるせえ!」


ノアが横から言う。


「それは僕にも失礼だ」


「お前もだよ!」


ツッコミが止まらない。


ルシアンが書類を見る。


「名前は――琥珀」


ノアが聞く。


「返品理由は?」


ページをめくる。


ほんの少し、間。


「……“癖”とだけ」


「雑すぎだろ!?」


ヒロが反応。


佐伯は軽い。


「癖くらい誰でもあるだろ」


一番危ない。


「お前が言うな!」


ヒロが叫ぶ。


琥珀は動かない。


呼吸すら静かだ。


「……どうする?」


ルシアン。


「この子で!」


即答。


ヒロは頭を抱える。


「マジかよ……」


ノアは一度だけ琥珀を見る。


何も言わない。




話は早かった。


書類。


確認。


終わり。


拍子抜けするほど、簡単だった。


ノアが言う。


「義兄さん、終電ないから送って」


「ああ」


即答。


「今日はちゃんと帰るんだな」


わずかに、空気が緩む。


ヒロは息を吐く。


(……普通に終わった?)


そう思った。


ルシアンが端末を操作する。


「車を手配した」


「手際よすぎだろ……」




佐伯は隣で琥珀を見ている。


ニヤニヤしている。


「よろしくな、琥珀」


軽い。


あまりにも軽い。


琥珀が顔を上げる。


視線が合う。


そして――


笑った。


「よろしくお願いします。ご主人様」


はっきりとした声。


空気が止まる。


ヒロがゆっくり振り向く。


「……喋れるじゃねえか」


ノアは何も言わない。


ただ、ほんの少しだけ目を細めていた。


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