うちの奴隷が店ごと強奪して全部解決したらしいんだが
※本作はギャグ・コメディ中心の作品です。
※倫理・制度・恋愛要素などは深く考えず、ゆるくお楽しみください。
ノアは、真壁の話を最後まで遮らずに聞いていた。
表情は変わらない。
「……なるほどね」
短い一言。
このショーパブは本来、奴隷を“解放するため”の場所だった。
働かせて金を稼がせ、その金で一般人としての資格を買わせる。
歪ではあるが、救済の形だった。
「ヴェクター・ネットワークに目をつけられた」
真壁が低く言う。
「今は彼らに資金調達に使われている」
ノアは少しだけ目を細める。
「拒否は」
「……出来ない」
即答だった。
「拒否すれば消される」
ノアは間を置かない。
「じゃあここ、僕が貰うね」
真壁の思考が止まる。
「……は?」
ノアは気にしない。
「裏にいる連中とは僕が話す」
軽く言う。
「顔見知りだから」
真壁は一瞬だけ迷う。
だが、さっきの光景が頭をよぎる。
「……分かった」
短く答え、連絡を入れる。
数十分後。
空気が変わる。
静かに、確実に。
スーツの男が入ってきた。
体つきや冷めた目線。
一目で分かる、“裏”の人間。
ノアが手を軽く上げる。
「久しぶり」
男の顔が歪む。
「……最悪だ」
本音だった。
ノアは小さく笑う。
「覚えててくれて嬉しいよ」
男は一歩だけ止まる。
視線が変わる。
「……なんでここにいる」
短い問い。
ノアは肩をすくめる。
「欲しかったから取りにきたよ」
軽い。
だが目は逸らさない。
沈黙。
数秒。
男が舌打ちする。
すぐに電話をかける。
「……ああ、俺だ」
短く状況を伝える。
「……ああ、そうだ」
一拍。
「サンクチュアリに目をつけられた」
空気が変わる。
真壁の目が見開く。
男の声もわずかに低くなる。
「……ああ、分かってる」
通話を切る。
視線をノアに戻す。
そして。
「ここは手を引く」
それだけ。
迷いはない。
そのまま踵を返す。
一切振り返らない。
扉が閉まる。
静寂。
真壁が呆然とする。
「……え?」
理解が追いつかない。
ノアが肩をすくめる。
「じゃあ、今日からここ僕のものってことで」
さらっと言う。
「書類出して」
軽い口調。
だが、否定の余地はなかった。
真壁の口から乾いた笑いが漏れる。
「……はは」
――その後。
ヒロの家。
扉が開く。
そこに立っていたのは、ノアだった。
ヒロが固まる。
「……は?」
次の瞬間、顔が歪む。
「お前、その体どうした!?」
顔はいつも通り。
だがそれ以外はボロボロだった。
アザだらけ。
縛られたような跡まである。
明らかに無事ではない。
ノアは靴を脱ぎながら答える。
「ちょっと揉めただけ」
軽い。
軽すぎる。
「ちょっとでその状態になるか!!」
ヒロがキレる。
リビングでは、別の空気が流れていた。
ステラとハルトがコントローラーを握っている。
「よっしゃ勝ち!」
「今の反則だろ」
完全にゲームモード。
レオンがちらりとノアを見る。
「……無事で良かったな」
ヒロが即座にツッコむ。
「ぜんぜん無事じゃねーだろ!!」
ノアはソファに腰を下ろす。
何事もなかったかのように。
レオンが腕を組む。
「それで、いつ乗り込むんだ」
ノアはあっさり答える。
「もう終わったよ」
一拍。
「貰ってきた」
沈黙。
全員の動きが止まる。
「……は?」
声が揃う。
ヒロは現実を受け止めきれない。
「ノア!!ちゃんと説明しろ!!」
叫び声が響いた。
一方その頃。
アルヴァルトはショーパブを満喫していた。
グラスを傾ける。
「やはり良い場所だ……」
満足げに呟く。
まるで何事もなかったかのように。




