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食料品販売店中間管理職異世界転生物語  作者: VATA


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13/18

その名は『配達』

 エクスワイヤ侯爵と『名代契約』を結んで数日、早速依頼が出された…それは………


「.…まさか、化粧品類をケース単位で購入されるとは…」

「それだけこの世界の女性にとって、魅力的な商品ということよね」

「それは間違いないわ…今から忙しくなるわよ」

 

 ハルトとリカはエクスワイヤ侯爵家の領地へと帰還する一向と共にリリアンティーヌが大量購入した化粧品等を満載した馬車と共に同行していた…これらの品々を侯爵家に届けるのが依頼であった……「配達」である。


「これだけの量をすぐさま用意出来るなんて……流石はハルト君ね…うふふ」

「あはは…」

「お母様だから言ったでしょう?ハルトは有能なのよ」


 その気になればこの場に配送センター並みの在庫を用意することは可能だが,ハルトのスキルは秘匿されている為,今回は物資を運ぶ事にした…しかし、何故侯爵夫人と娘のアリアンレーゼが同じ馬車に乗っているのか、そこは理解ができなかった。


「それにしても…貴方達の馬車は余り揺れないわね?」

「あははは…」


 リカの『工作』で改良中なのである。

サスペンション構造を試験的に取り付けており通常の馬車よりも衝撃は少ないのだ。


「それにしても王家のお誘いも侯爵家が防波堤になってくれて、参加しなくても良くなったし…」

「そうだね…そこは感謝かな…」

「うふふ…可愛いアリアの頼みだもの…ちゃんと婿様はお守りしますわ」


 今回、シャクテンにはアストリアーシェを残しており、彼女の護衛と店の警備のためシグナル三姉妹のうち二人は留守番だ…今回同行したのはアカメである。

侯爵家の騎士団の皆さんがいれば、危険な事は無いだろう。


 空が茜色に染まる頃,森の手前の小高い丘の上で本日の野営が行われる事になった。


「君がハルト君だね?」

「はい?…そうですけど…貴方は?」


 そこで二人の男女の騎士に声をかけられた。


「兄上!姉上!」


 隣のアカメが声を上げた…そうか…彼等は…


「お初にお目にかかる…私はモールス・シグナル…アカメ…久しいな」


 シグナル家の長男である。モールスは短く、刈り込んだ金髪に細身で引き締まった体のいわゆるイケメン細マッチョであった。

 今後のシグナル家を継ぐため、騎士団の副官としてその能力を発揮している。


「私はデリンジャー・シグナル…ふーん貴方がハルト君かぁ…」


 同じくシグナル家の長女であるデリンジャーはモールスが長い金髪のカツラをかぶっているのかと思うほど、その見た目はよく似ていた。

彼女は一年前まで王都で冒険者をしていたが、故郷に戻ってくるタイミングでシグナル騎士団へと所属を移した。

その経験を活かし,主に傭兵たちを取り仕切っている。


「ハルト殿に会えて光栄だ…妹たちをよろしく頼む」

「アカメ達が帰ってくる度に、すご〜く惚気るから…お姉さんとっても気になってたのぉ〜」


 モールスからは爽やかだが謎の圧が。 

デリンジャーは初対面とは思えないほど距離感が近い…あといい匂いがした。

彼らの背後にはやや目つきのキツい金髪ショートカットの女性騎士がいた……

何か睨まれている様な…何か気に触る事でもしただろうか?


「むぅ」


 隣のリカがお尻をつねってくる…微妙に痛いのでやめて欲しい。


「今日はここで野営をする様だ…明日の昼には侯爵家に到着できるだろう」


 一行が野営地に選んだのは、公爵家との間にある広大な森の手前の小高い丘の上であった。

森の中にも、魔物はいないわけではないため、安全をとって周囲の見渡せるここに野営を設営することにした。

 侯爵家の従者達が魔道を使って巨大なテントを設営している……というか次元収納から取り出している……圧巻だ。

騎士達はその周囲を守るように各自がテントを設営している。

ハルト達も理科の作成した『それなりのテント』を準備した……


「お好み焼きが食べたいわ!」


 設営を終えたリカが突然吠えた。


「いきなりどうしたの?」

「最近薄味が続いていたから……あのソースが食べたいの…」


 気持ちはわかる…うどんもいいけど…やっぱり肉玉そばだよね。

周囲を見ればいまだに設営中ではあるが,食事の準備をする人たちも居たので大丈夫かな?


「じゃあ…準備しようか……『ダイコクの惣菜コーナーで使用していた鉄板』を召喚」

『ダイコク惣菜バックルームで使用していたお好み焼き用鉄板を召喚します』


 ハルトの腰のバックから巨大な鉄板の台座が現れる……どんな仕組みなんだろ?


『電気・ガスが使用不可の為,火の魔石を利用するように変更しております』

「…この前アップデートしてから妙に使い勝手が良くなった様な……」


 ハルトは気がついていないがハルトのスキル『召喚。』は『賢者』を内包しており

いるのだ。


「関西風もいいけどやっぱり広島風よね!ハルトさん材料をお願い」

「ほいっと…肉はオーク肉で代用するから……異世界風って事になるけど…」


 だがソースはふくよかな女性の顔が描かれたあのソースは譲れなかった。










「…そろそろ食事を…ハルト達も………?なんだ…いい匂いだな」

「?そうね…嗅いだことが無い匂いだわ…」


 アーサーが気がつけば,野営地がいつもよりざわついていた…今まで嗅いだ事の無い甘い様な匂いを辿るとハルト達の野営地にたどり着いた。


「俺もその『肉玉そば』を!」

「俺はうどんでたのむ!」


 何故が騎士達が列を成してハルトに注文をしていた。


「これは一体何事だ!」

「!侯爵様!」


 騎士達が一斉に姿勢を正した。


「あ、アーサーさんもいかがです?」

「ハルト…これは一体…なんだ?それは?食べ物なのか?」


 先ほどから漂う甘く、香ばしい香りはハルトの手元のお皿に乗せられた土のような色の食べ物からだった。


「いい匂いね…見た目はよろしく無さそうだけど…」


 アーサーの後ろからリリエンティーヌが顔を覗かせた。

お好み焼きに興味津々だ。


「えーと…このままじゃ食べにくいかな?…リカ『はしまき風』にして」

「はーい」


 見ればハルトの隣でリカ技鉄板の上で何かを焼いていた…それに加工された木の棒を差し込み手際よく絡み付けるとあの香ばしい香りのソースをつけてこちらに手渡してきた。


「お二人ともこれなら食べやすいかな?熱いので気をつけて」


 アーサーと二人で顔を見合わせる…騎士達も食べているので毒味の心配は要らないが……騎士達から視線を感じる。


「では…はむっ………!!」

「おいっ…リリ……リリ?」


 一口食べたリリエンティーヌはその場で硬直した。


(なっ、何この食べ物!柔らかくもちっとした食感でありながら中の野菜の食感と風味はそのまま…!さらにこのソース?の暴力的な味!!)


「!!」


 隣のアーサーを見れば同じく目を見開いて一心不乱に食べ続けている……

周りの騎達も…「俺もあれ食べて見たいんだけど?」とハルトに注文していたりする。


「あーいい匂いがすると思ったらやっぱりハルトとリカね…今日は『オコノミ』なのね?」

「アリア…君もどうだい?」


 そこに現れのは我が娘,アリアンレーゼだった…慣れた風にハルトから食材を受け取り手慣れた風に食事を始めた。


「…アリア…随分と馴染んでいますね」

「!?お母様!!ごほっごほっ!!」


 背後からリリエンティーヌに声をかけられたアリアンレーゼは咽込んだ。


「…滞在中に既に食べましたね?」

「えっと…その…はい」


 アリアンレーゼは観念して滞在中の食生活を報告した。









「アリアちゃん!ずるい!ずるい〜!!」

「お母様…落ち着いて…」


 娘の報告を聞けば、これ以上にもおいしいものを色々と提供されていたようだ…ずるい!

しかし、これで彼女の中の1つの疑念は確定した。 

アストリアーシェからも報告を受けていたが、あの2人は『渡り人』…異世界からの来訪者に間違いない。

 アストリアーシェが言うには、2人からは女神様の気配がするらしい…いわゆる使徒とも呼ばれる存在だ。

シャクテンの街を発展させた知識や手腕と言い間違いないだろう。


「…今更ですけど…僕達公爵様に対して失礼な言い方してますよね?すみません怒ってます?」


 と、アーサーに話しかけて大笑いされていた…本当に今更だわ。

本来であれば侯爵家の当主に対しての言葉遣いは褒められたものではないが…アーサーは入婿だ。

彼はエクスワイヤ領で名を馳せた騎士である

その手腕と功績を我が父に認められて、私の伴侶に選ばれたのだ。

まあ…私がごり押ししたんですけどね。

なので、アーサー自体もそんなに礼儀作法を気にしていない……堅苦しい挨拶を好む性格ではない。

むしろ騎士達や領民には好かれているのだが……

王都周辺の貴族達からは疎んじられているだろう。

まぁ、そこを守るのが私の役目なんですけどね…

私は王妃の妹だ…なのでその伴侶であるアーサーに面と向かって喧嘩を売る貴族は居ないのである。

しかも我がエクスワイヤ領は南部の境界を『魔の森』と接している為魔物との戦いで王国を守る要でもあるのだ。


「…おい…お前達見張はどうした?」


 ふとアーサーが周囲の騎士達の顔ぶれに気がついてそう言い放った。

え?もしかして全員ここで食事してるの?


「ああ大丈夫ですよ…今はアカメが警戒してくれてますから」


 ハルトの指差した方を見れば…彼らの天幕の柱の頭頂部に小さな見張用の囲いがあった……そこに一人の赤髪の女性が居た…しかし侍女の制服なのは何故だろうか?


「ふむ…アカメ・シグナルか…」


 聞けばその才能を発揮して『狩場を統べる戦士(ハンティンウォーリア)なる特殊職を発現させたシグナル家の次女…今やこの野営地を『狩場』と認識した彼女によってその全てが掌握さえていると聞く…

 アカメが立ち上がり上空に向かって矢を放ち、再びその場に身を屈めた……

アーサーが目を凝らしてその矢の軌跡を追うと、丁度森から姿を現した狼に吸い込まれるように消えていった……


「!!…見事だな…」

「ええ…それにキーラが持たせてくれた『虫除け』がありますから…」


 と、ハルトの背後には空中に浮かぶ淡い光を放つ拳ほどの大きさのクリスタルがあった…


「虫除け?…いやハルトこれ『結界石』なのでは…」

「?キーラは虫除けと言ってましたよ?」


 疑問に思ったアーサーが背後にいたお抱え魔法使いに視線を送ると彼女は凄い勢いで首を縦に振っていた。

……結界石に間違いないらしい…


 結界石とは神聖魔法の使い手が祈りを込めた石でその魔法の威力に応じて効果範囲も価格もピンキリの品である……一般的なのはビー玉の様な魔石で個人の周囲を覆うくらいである。


(あのサイズの魔石でこの範囲を結界で覆うなど…王都の聖女による大規模結界以外では聞いたこともないが……)


「ほらほら…お父様も食べてください…」

「アリア…そうだな…頂こう…こんな日も悪くはないな…」


 最近見ることの無かった娘の無邪気な笑顔と妻の楽しげな笑顔にアーサーは思考を放棄した。


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