ことりたちの悩み事
「ねねさまっ、ねねさまっ!」
「はい、なんです?愛」
「ににさまっ、ににさまっ!」
「ん、なんだい?愛」
にぱーと、笑ってくるりとまわると縦ロールの少女は、意味深な笑みにかえて、右手の甲を左頬あたりにやると
「おーほっほっ、さぁひざまじゅきなしゃいっ!」
2人は、あ、噛んだ。と心で思った。
また、少女はくるりとまわると先ほどと同じように
「おーほっほっ、さぁひざまじゅきなしゃいっ!」
また、噛んだ。
今度こそ、恥ずかしくなって顔を真っ赤にさせふるふるふるえ出す。
「まあまぁまぁ、愛さん?恥ずかしがっては、女王はできませんわ!」
そういうと、中世ヨーロッパなや香り漂う3人の母は、
愛と同じように手を添えて、「おーほっほっ、さぁ跪きなさい!」
縦ロールはもうとうの昔にやめ、今ではストレートになってはいるが似合う。似合いすぎる。
「麗、君がそういえば世の男どもはみな跪く。外では、俺のそばにいるだけにしろよ?」
愛以外というか、雅と麗人は心の中で叫んだ。
───いやいや、ないですよ。
「まあ、雅人様。そんなことは、ありえませんわ。雅人様が言えば、跪いてしまいますわ」
母は、ああ見えてまともな人だ。すこし、天然過ぎるが。
でも、たしかにそうかもしれないな、と2人は思った。
長女雅は、雅人似の和風美少女。長男麗人は2人の顔のいいとこどり、の美男子。次女愛は、麗似の西洋美少女。いわば、美男美女兄弟。
上二人は、ごくごくまともがゆえに悩み事がたえない。
その一、両親の関係。特に父が厄介すぎる。子どもにはわけへだてなく愛する、そこまではいいとして…母への愛が重すぎる。母大好き兄弟がゆえに余計だ。
その二、末っ子の愛が心配。麗の天然な部分と雅人のちょっとお馬鹿なところが似てしまった。ああ、心配!母に似すぎて余計に心配!
その三、父は場所も時間も関係なく盛る。やめろ、教育にわるいでしょ?!愛はまだ、初です!
そんなわけで、今日も悩み事がたえません。
「ねぇさん、」
「れい……」
「「2人でなんとしても、乗り越えよう。そして、愛は2人でまともな子に育てよう」」
ああ、今日もまたはじまる。
「ねねさまっ、ににさまっ!」
二パッも笑って、
「おどきになって、お邪魔よ!!」
悪役お嬢様役ではなく、おしとやかお嬢様を覚えさせるのだ!なんとしても!
「まぁ、はしたのないのね、愛は。おしとやかにならなければ、鬼がきますわよ?」
「鬼がきても、僕は助けてあげられないよ。」
「お母様、お父様が帰ってきますわ。お出迎えを」
これは、父がたいそう喜ぶ。
こうやって、毎日お父様の機嫌をとるのは日課である。
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麗人の独り言
父が恐ろしいと思ったのは、6歳の頃。
のちのちわかったのだが、僕が引っ張りだした紙切れを見た父は、満面の笑みで
「ソレ、かたさないとお母様どこかへいっちゃうよ?麗人」
これ、おそろしかった。
その紙切れ、母が一生懸命にとった国家資格でした。
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これにて、一応終わりにします。
短編予定だったんですけど、思いついたのでちょこちょこ書いてました。
また、ふとしたときにかくかもです。