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第3章 帝国戦争編 38話 開戦

ギルドマスターの執務室の扉をノックし、開けるとギルドマスターは執務机に直接腰を下ろしながら楽しそうに笑っている。


「やあ、来たかジャン」


「何だか楽しそうですね」


「これを見たまえ、先ほど届いた帝国からの書簡だ」


「拝見します」


受け取った紙には長ったらしい口上やら装飾文やらでわかりにくいが要約すると『匿っている魔女全てとギルドマスターの首を差し出せ。さもなくば戦争だ』といったことが書かれていた。


「この様なことは認められない、よってこれよりギルドは帝国と戦争状態となる。

我々にここまで堂々と喧嘩を売ってきた国は久しぶりだ。

養成所は正直そちらにまわす余力がかなり削がれるため休業もしくは規模縮小になるだろう。

そこで今回君を呼び出した本題だ。受け取りたまえ」


ギルドマスターは書類を渡してきた。


「これは・・・単位認定書?」


「君達パーティを調べさせてもらったがかなり優秀みたいじゃないか。個人能力においても全員C級くらいの実力はあるし何よりチームワークがいい。まだまだ未熟な所もあるがそれぞれが補いあえるいいパーティだ。

今回我々ギルドは養成所の縮小にしたがい、能力が一定水準以上の者は特別に卒業を許可しようということになった。

冒険者として登録されれば行動もしやすくなるだろう。

その書類を持ってギルドプレートと共に受付にだしなさい。

さあ話はここまでだ。これから世界が動き出す。やるべき事は迅速に行いなさい、後悔しないように」


そう言うとギルドマスターは執務机で書類仕事を始めた。


「ありがとうございました」


一礼してから執務室をでると受付の前にはアプリがいた。


「呼び出されたって聞いて・・・何かあったんですか?」


「詳しい話は後でするよ。とりあえずアプリと俺の分だけでも処理するか・・・アプリギルドプレートだして」


自分の分を取り出し受付に渡しながら書類をめくる。


「卒業許可とプレートの更新をお願いします」


「え?卒業?」


「承っております。では更新が完了するまで10分ほどお待ち下さい」


アプリのプレートも渡しながら頷く。


「じゃあできた頃取りに来ます」


アプリの手を引きつつギルドを出た。


歩きながら周囲の気配をさぐりつつ工房へたどり着いた。


「みんないるか?」


工房の中には残りの4人が待機していた。


「先ほどギルドマスターから呼び出しがあってな、帝国から宣戦布告があった。

そのため特例で俺達は残り1年を残して卒業、冒険者登録してもらえるらしい。

とりあえず俺とアプリは申し込みしてきたからみんなも申し込みに行こう」


「ん?ジャン、どういうこった?」


「戦争中は養成所が人手不足で閉鎖されるらしく、現状で実力が十分ある生徒は卒業させるらしい」


「オイラが認めてもらえるなんて・・・兄貴のおかげだよ!!」


「やったねお兄ちゃん!!」


マイトとジュネは飛び上がって喜んでいる。


「私はまだちょっと自信が無いですけど・・・」


「自信なんかこれから身につけていけばいい。仲間ってのはみんなで補い合うものだ。

ユリなら大丈夫だ」


フェブがユリを励ましている。


「さて、そろそろ行こうか。ギルドプレート忘れるなよ」


準備をしてから全員でギルドへ向かって出発した。


受付の女性からギルドプレートを受け取り、他の仲間が申請するのを黙って見ていた。



何だか嫌な気配がする・・・


「マイト・・・何だか嫌な気配がしないか?」


「え?ちょっと待ってくれ」


ジュネとはしゃいでいたマイトを呼び止めるとマイトは耳を立てて周囲を伺いだした。


「何だろう・・・確かに何だか嫌な感じがする。オイラちょっと様子見てくるよ」


「あ、私も行く!!」


マイトとジュネはギルドの屋上に向かって走り出す。


装備を確認しつつ工房への逃げ道をシミュレーションする。

「ジャン・・・」


アプリが心配そうに右の袖を握ってきた。


「大丈夫だ。準備はしてきただろう?」


アプリの頭をなでつつマイト達が戻ってくるのを待った。





「兄貴!!徐々に包囲されてってる!!たぶん魔女狩りの連中だ!!

異常に気配が薄いからたぶん暗部の奴らだ」


「あとジャン兄、すごい数の兵隊が街に近づいてきてる」


「とりあえず工房まで逃げるぞ。マイト、一番囲いが薄そうな所わかるか?」


「ああ、ついてきてくれ」


「よし、行こう。ジュネ、お前はギルドマスターに見たことを報告してから工房まで来てくれ。たぶんお前1人なら問題ない」



「俺とユリで囮役をやろう。ユリなら体格はちょうど同じくらいだ。アプリ、ローブ貸してくれ」


アプリがローブをユリに手渡し、アプリには俺の外套を渡す。フード付きのマントなので顔と髪を隠すにはちょうどいい。


「よし、先に行く。工房で会おう」


「アプリさん気をつけて下さい」


フェブとユリが出て行くのを見送り、こちらも裏口から出発した。


マイトが先導し、アプリ、俺の順で走る。


フェブの方に引きつけられているのかずいぶん静かだ。


「兄貴・・・なんかおかしい。罠かもしれない」


「・・・いざとなったら俺が道を作るから2人だけでも工房へ向かってくれ。適当に時間を稼いでから撒いて行く」


走りながら打ち合わせをしていると不意に周りに人の気配が現れた。


「やはり罠か・・・正面破るぞついてこい」


マイトを追い越し加速、腰の剣を引き抜く。

右に黒剣、左にドラゴンキラー、この数ヶ月ひたすら二刀流の鍛錬を繰り返していたため、今では二刀流が基本になった。


正面に現れた黒尽くめに仮面の男2人組に斬りかかりそれぞれ足に傷を負わせる。


開いた隙間を強行突破し更に進むと仮面の男ばかり5人も現れ道を塞いでいる。


「兄貴!!どうする?」


「止まるな!!俺を信じろ!!」


一気に加速し敵の直前で一度減速、相手のタイミングを外してからまた加速、距離を詰めると一番前の男に前蹴りを叩き込み後ろの奴らを巻き込む。


そのままの勢いを生かして一回転する形で男達を切り捨てた。


「よし、行け!!」


「ジャン・・・気をつけて」


2人が走り去って行くのを見送ると路地を塞ぐように構える。


囲む形で後ろにいた男達を睨みつける。


「ここは通行止めだ!!通りたければ俺を倒してからにしろ」






そのまましばらく時間を稼いでから路地の壁を切り裂き土煙をあげ敵を撒いて逃げ出した。


「ふ~不意打ちすればなんとかなるが流石に正面からはキツいな・・・」


なんとか工房前までたどり着き、扉を開けると中ではマイトが血まみれで倒れていた。


「マイト!!どうした!!」


マイトを抱き上げ頬を叩く。

「う、う、兄貴・・・?ごめん」


「とりあえずこれを飲め!!」

回復薬を取り出しマイトの口に流し込む。


「ハァハァハァ・・・ごめん。罠だったんだ・・・最初から工房で待ち構えられてた・・・オイラじゃ守りきれなかったよ・・・ごめん」


マイトは悔しさから涙が溢れてきている。



「ふぅ~、ただいま~っと」


フェブとユリが戻ってきた。


「ん?ジャンそんな所でどうした?ってマイト!!血塗れじゃねえか!!

つーかアプリはどうしたジャン!!」


「・・・アプリは連れ去られたらしい。ユリ、マイトを診てやってくれ」


「は、はい」


ユリにマイトを渡すと工房の一角に歩いていく。


「ジャン!!どうする!?」


「アプリはどうやら街を出てから転移で運ばれたようだ。方向と距離からしてたぶん帝国内だろう」


手の中の指輪を意識しつつ、腰に道具袋を取り付け、腰の後ろに短剣を2本、更に胸に投げナイフを左右に10本取り付けたベストを着て、篭手をつける。こんな事もあろうかと様々な装備を事前にマイトと話し合って作っておいた。


「アプリは俺が取り戻す。フェブ達は馬車でここから北にある帝国との間の関所まで来てくれ、そこで合流しよう」


「おう!!わかった。あとコイツも持って行け」


フェブは棚の中から黒い外套を取り出すと投げ渡してきた。

「そのマントは闇の精霊の加護を与え、刻印魔術により魔力供給が無くても効果がある。

効果は高くないが気配を薄めてくれる。隠密にはぴったりだ」


「ありがとう、いってくる」


「いってらっしゃい、ジャンさん」


「よろしく頼むよ兄貴、必ず迎えにいくから」


みんなに見送られながら懐から指輪とセットの魔法陣を取り出した。


今行くぞアプリ・・・待ってろ。

いつも拙作をお読みいただきありがとうございます

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