26話 フェブVS魔術師
フェブがリングに両手をぶらぶらさせながら上がっていく。
今日はいつものハンマーは持たずに腰に様々な物をぶら下げている。
ナイフ、手斧、瓶、よくわからない物もある。
「行け、スパイラル!!
土臭いチビなど敵ではない」
リングに黒いローブ姿のしたに筋肉質な体を持った男が上がっていった。
「ふ~ん、魔術師の癖に鍛えてるんだな~」
「俺は神速のスパイラル、加速魔術と肉体強化魔術に特化した魔術師だ。
まあ魔術闘士ともいえるな」
男はローブを脱ぎ捨て軽く屈伸をした。
「では・・・はじめ!!」
合図と同時に相手の足下に魔法陣が出現した。
「いくぞ、見失うなよ。さっさと終わったら詰まらんぞ・・・『加速:瞬身』」
魔法陣が輝いたと思ったら次の瞬間残像を残して姿が消えた。
「うお!!やべえ」
とっさにフェブが横っ飛びすると立っていた場所にかかと落としの体勢でスパイラルが現れた。
「いい感だ、どんどんいくぞ『加速:瞬身』」
再びスパイラルは姿を消した。
加速魔術は扱いが難しく、加減を間違えると体がバラバラになってしまうため、習得するのにかなりの修練がいる上に燃費が悪いためあまり使う人がいない。しかしスパイラルはかなりのレベルで使いこなしている。やはり使いこなすとかなり強力な魔術みたいだ。
「とりあえず、これ試してみるか。『魔術銀の蜘蛛』出番だぞ」
フェブは持っている瓶を開け中身を撒き散らした。
中からは銀の液体が出てきたと思ったら蜘蛛の形になる。
「対象は加速魔術、行け!!」
蜘蛛は再び液体になると周辺に銀の蜘蛛の巣がはられる。
「ぐ、なんだ?これは・・・」
急にスパイラルが現れたと思ったら、苦しそうな呻いている。
「魔力が吸われる?」
「これはな、魔術銀を液状にしたうえに刻印魔術を施した核をつけた物でな。
指定した魔術に反応して魔力を吸着する巣をはるんだ・・・難点は吸着量に限界があることかな、この量の魔術銀だとここまでだな。戻れ」
フェブが瓶を向けると中に銀が吸い込まれていった。
「ふ~、ふ~、ふ~この程度俺には効かんわ!!『加速:瞬身』」
体勢を戻したスパイラルは再び加速魔術を使用した。
しかし明らかに先ほどまでのスピードはないように見える。
「次はこれを使ってみるか、『タタラの斧』。頼むぜタタラの神様よ」
腰の手斧を抜くと地面に振り下ろす。すると地面に魔法陣が出現した。
「行くぞ、ついて来いよ」
次の瞬間フェブの姿が消えた。
「馬鹿な加速魔術だと!!ドワーフ風情が・・・」
「正しくは加速じゃないが、なっと!!」
斧の背でスパイラルを殴りつけて姿を表した。
「ここまでだな。俺の勝ちだ」
気絶したスパイラルを相手の方に投げ飛ばし、リングから降りてきた。
「勝った勝った。用意した魔導具、全部使わなかったな」
「お疲れ、最後の斧なんなんだ?」
「これか?これはな体内のエネルギーを一気に燃やす事で数分間のみ加速魔術なみに動けるようになるんだ。弱点として出しきるとその後動けなくなるし、途中でやめてもめちゃくちゃ腹減るんだ。
なんか食い物ないか?」
「私、おやつありますよ」
ユリがクッキーの袋をフェブに渡す。
「サンキュー。さてお膳立ては出来たぞ、決めてこい」
フェブが背中を叩き、リングから離れた所で胡座をかいてクッキーをボリボリと食べ始めた。
「兄貴なら余裕だよ。頑張ってくれ」
「ジャン兄、やっちゃって!!」
「ジャンさん、怪我だけは注意してください。慢心はいけませんよ」
マイト、ジュネ、ユリが一言ずつ声をかけてフェブの近くに下がっていく。
「ジャン、気をつけて・・・」
「大丈夫だ、アプリ。
・・・お守りももらったしな」
「あ、あれは・・・あの・・・本当に頑張って下さい!!」
からかったらアプリは顔を真っ赤にしてみんなのもとに走っていった。
「さて、やるか・・・」
篭手の具合を確かめ、剣を持つとリングに上がった。
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