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14話 友達、もとい弟子

養成所に入ってすでに3ヶ月たった。


この3ヶ月の間に基本的な知識や世界情勢、冒険者としてのルールやマナー、心構えなどを叩き込まれた。


またどのような技や魔術も基礎体力のない者には宝の持ち腐れだという信念のもと、毎日走り込みもさせられた。


普段から鍛錬を行ってきた俺や一部の人以外、特に魔術師など後衛志願の者にはかなりキツいらしく、アプリも毎日最後には寮まで背負って帰る事になった。


フェブは普段から鍛冶屋として厳しい修業をこなしてきただけあって走り込みはそつなくこなしていた。しかし座学が嫌いでよく授業中に居眠りをしたり魔導具をいじってたりするため、テストではほぼ壊滅していた(鉱石や魔石などについては勉強せずとも完璧)


そして俺は知識については母さんから徹底的に叩き込まれているため座学は問題無くこなし、走り込みもいつもより少ないくらいだった。また養成所の鍛錬場の使用許可を貰い、毎朝剣を振る場所も手に入れた。


そして今日は大雑把に前衛、後衛に分ける選抜の日である。ここで前衛に選ばれると明日から実技が格闘技や体づくりなどに偏り、後衛になると魔術や精霊術などに偏る。ちなみにある程度は要望も通る、ただし2年になれば本格的に各職業ごとに授業が別れていくため、そこまでにある程度能力を上げないと留年する事になるため、あまり無理をする人はいない。


「ジャンとフェブは前衛ですよね?私1人後衛は寂しいですね」


「まあ、アプリはすぐに友達できるんじゃない?俺はフェブはどうかわかんないけど・・・」


「まあな~アプリ嬢くらい綺麗どころだったらすぐにファンクラブもできるんじゃないか?」


実際これまでもアプリに声をかけてくる男は山のようにいた。とりあえずアプリが困っているようなら追っ払ってきたけど、授業別れたらこれからは1人でそれらに対処しなくてはならない。


「ファンクラブはいらないですよ・・・2人だって、すぐに前衛の友達できるんじゃないですか?」


「あ~俺は無理無理。以外とギルドのお膝元でも亜人差別は残ってるみたいでよ。特に貴族出身の連中は声かけても嫌な顔しかしねぇ。エルフの連中はドワーフを嫌ってるし、ドワーフは既に故郷ごとにグループ出来てて入りにくいんだ。まあしばらくはジャンとつるんでるさ」


「俺はこの体つきだからなあ。怖がって余り人が近づいて来ないんだよな~。 とりあえずまだ戦鬼ってバレてないけど、いつかはバレると思うし・・・どうすっかな~俺もしばらくはフェブとつるんでるとするよ」


ちなみに戦鬼とバレにくいように髪は母さんの毛染め薬で茶色に染めて大柄な人間で通している


「まあ、

座学は一緒なんだからこれからもよろしくな!」


「お前のよろしくは『補習の手助けを』にしか聞こえないなぁ・・・」


「あはは・・・」





しかし1週間後、意外にも実技で格闘術を終えた後に友達?ができた。


「オイラ、あなたの武術に惚れ込みました。弟子にして下さい」


授業後、そう言って話しかけてきたのは頭の上に獣の耳、後ろには尻尾が見える、獣人の少年だ。


「は?・・・俺達今日型しかやってないよね・・・」


「見る人が見ればわかりますよ。あなたの型は流れるように無駄が無く、体の使い方を知ってる動きでした。あれを見るだけで強いのはわかります!

それにあなたは他の人がこなすだけだった型の繰り返しに真剣に取り組み、また一つ一つの動きにしっかりと意味を持たせていました。これはあなたがしっかりと武術に取り組んできた証だと思います」


「と、言っても俺達にはしっかりと教えるプロである教師がいるのに、俺がでしゃばっちゃ駄目だろう。それに見ただけでそれだけわかるということは君もそれなりに強いんだろう?」


「オイラは貧乏なうえに獣人差別の厳しい村で育ちました。なので武術は道場の窓から覗いて身につけた我流なんです。見る事には慣れていても、まだ動く方は未熟なんです。でもオイラはもっと強くなりたいんです!授業は全員に均等に教えるため余り一人一人に時間を割いてくれません、このままじゃオイラは平凡な強さで終わってしまう。お願いします。お金は払えませんけどお礼はなんでもします!」


「なんで、そんなに力を求める?」


「一緒に入学した双子の妹がいます。オイラに残された最後の家族なんです。アイツを守ってやれるくらい強くなりたいんです」


「そうか・・・いいよ、出来るところまでは鍛えてやる。でも師匠は無しかな、俺は毎日鍛錬してるから、そこにくれば相手するよ」


「ありがとう。絶対行くよ!」


「じゃあ今日は授業全部終わってから鍛錬場にいるから」


「わかった。兄貴」




「兄貴?」


「師匠じゃないけどオイラより上なんだから兄貴!じゃ、また後で!」



そう言って獣人の少年は走り去って行った。


「あ~あ名前も言わずに行っちまったよ」





放課後、鍛錬場でストレッチをしていると獣人の少年がやってきた。


「兄貴!よろしくお願いします!」


「あぁ、よろしくな。とりあえず自己紹介しようか。俺の名前はジャン・アーク。基本的には剣士だけど育ての親が冒険者で師匠で、8歳の時から剣の他にも一通り習ってきた」


「オイラの名前はマイト、孤児だから名字はないよ 一応、我流拳闘士だよ。あ、あと犬の獣人です」

互いに自己紹介を済ませ頭を下げる。


「それじゃ、とりあえず手合わせしてみようか・・・マイトがどれくらいできるのか見てみよう。準備はいるかい?」


「わかった。準備はいいよ、妹に伝言しに行ってからここまで走ってきたから」


「よし、ではお願いします」


「お願いします!」


そう言って互いに構える。先にかかって来たのはマイト、思いっきり体を倒すと一瞬でトップスピードに乗り飛び出す真っ直ぐに突撃してきたと思ったら右手を一気に振り抜いてきた。


(速い・・・でも単調だな・・・)


振り抜かれてきた右手を左手で払うとマイトは勢い余ってよろめいた。そこで伸びきった右手をとり足払いをかけて背中から投げ落とした。


「あ痛~!」


「ほら、すぐ起きろ」


「くそ~まだまだ!」


立ち上がったマイトは再び一気に駆け寄ってくると左拳から右拳、そして回し蹴りへとつながるコンビネーション。しかしやはり速い攻撃だが予備動作など無駄が多く、見切りやすい単調な攻撃となっている。せめてフェイントをいれればもう少しましになると思うのだけど・・・とりあえず拳をかわし、蹴りを受け止めると腹に拳をめり込ませた。


「ぐふっ!!」


「あ、やりすぎた」


その場に崩れ落ちるマイト。とっさに支えて怪我を確認する。特にひどい怪我がないことを確認すると鍛錬場の隅にあるベンチに寝かして、鍛錬場備え付けの回復薬を飲ませて自分の鍛錬を行うことにした。





「ふぅ・・・」


一通り型をなぞり鍛錬場のかかしに打ち込みを済ませて一息つけた。


「あ、終わったの、ジャン?」


気づいたら来ていたらしいアプリがタオルを持ってきた。


「あ、ありがとう。どうした?いつもは帰りに合流するだけなのに」


「今日は後衛の友達の付き合いです。友達のお兄さんが鍛錬場にいるって聞いてきたんですけど・・・」


「お兄ちゃん!お兄ちゃん!目を覚ましてよ!お兄ちゃん・・・」


「なぜか、ベンチで気絶してて・・・ジュネったらパニックになっちゃって・・・何があったんですか?」


「いや、修業をつけてくれと頼まれてね、ちょっと手加減を失敗してな。回復薬は飲ませてあるから、そのうち目を覚ますだろう」


「あなたね、あなたがお兄ちゃんを!よくもっ!!」


マイトの妹という少女が弓を構えてつっこんでくる。


「兄弟そろって一直線だな~」


「ちょっと、ジュネったら落ち着いて!」


「とりあえずアプリ後ろに下がって」


ジュネは最初の矢をつがえると距離を詰めつつ放つ。顔を狙ってきた矢を頭を倒してかわす。次の矢をつがえたジュネは狙いを下げて放つ。これをかわすとアプリに当たる危険があるので受け止める。


「なっ!?矢を受け止めた?」


「前衛職相手に後衛が距離詰めたら駄目だよ」


一気に距離を詰めると次につがえた矢をつかみ弓ごと止める。


「ここまでだな・・・兄貴が目を覚ましたようだぞ」


「う、うん?オイラなんで寝てるんだ?あれジュネ、兄貴も何してるんだ?」


「マイト、この誤解した妹を止めてくれ」





目を覚ましたマイトがジュネに経過を説明し、しおれたジュネが俺に謝ってきた。その後アプリも含めて4人で食堂に移動し、お茶を飲みつつ鍛錬の反省会をした。


「マイトは攻撃が真っ直ぐ過ぎるな。基本の打ち込みは鋭いし重い、しかし直線すぎるため読み易いし、かわせる。これまで自分と同程度以上の力量の相手と戦ったことないだろう?もう少しフェイントなどを織り交ぜる、相手の死角をつく戦いをする。それらを学ぶだけで大分変わると思うぞ。あと攻撃の前に予備動作が癖になってるからフォームを確認してもらいながら矯正するべきだな」


「わかった。意識するよ」


「次にジュネ・・・」


「えっ!!私?」


「お前は素早いし、弓の腕も悪くは無い。ただ、そもそも弓兵は直情的になってはならない、どんな時も冷静に狙いを定め確実に矢を当てることだけに集中すべきだし、遠くから狙えるというアドバンテージを自分から詰めて無くすのはいけない。近接戦闘もこなせるというなら話は別だが、今日見た感じ近接戦の心得は無さそうだしな。

後衛がしっかり援護してくれると信じてるから前衛は体をはれるんだ。その信頼に答えるためにも弓の腕以上に精神面を鍛えなさい」


「はい・・・」


反省会を終えると寮に真っ直ぐ帰り、マイトには明日の朝からは基本を教えることにした。




翌朝、何故かマイトと一緒にジュネも来ていたが・・・


(マイト、この妹守らなきゃならないほど弱くないだろ・・・)


結局弟子が2人になってしまった。

格闘シーンのスピード感を文章で表現したいなぁ・・・


いつも拙作をお読みいただきありがとうございます。


ちなみに養成所は設定上年齢制限は無いということで・・・

マイト達双子は14歳の設定です。


いろんな人種の共存がやりたいのに普通の人間がほとんど登場しない・・・

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