15話 エルフと精霊
日々の鍛錬にマイト達が混じるようになって、しばらくたったある日、夕方座学の方をみてほしいと頼まれて(マイトもジュネも読み書きが余りできず、授業は聞いて覚えている)資料室に行くことになった。
「よく、これまでテスト大丈夫だったな・・・」
「字の読み書きできない人向けに口頭試問でのテストがあるんだよ。兄貴は知らなかったかも知れないけどこの養成所の半分は貴族の跡取りになれない次男三男で4割は普通の家庭から残りの1割は孤児院などの出身なんだよ。孤児院では子供に勉強させられるほど余裕のある方が珍しいから、必然的に1割は字の読み書きなんかは出来ないのさ」
そんな事を話しつつ資料室の前にたどり着くと中から怒号が聞こえてきた。
「あ~~!!うだうだうっせぇ!!いつまでもネチネチと陰湿な野郎共が!!俺はこういうのが一番嫌いなんだよ!!」
フェブの声?扉を開けると中でフェブと数人のエルフが睨みあっていた。
「なんだい、土臭いドワーフが我々崇高なエルフに話しかけないでくれないか?」
「その崇高な奴らが同族をいじめるのかよ!!」
「これは我々エルフの問題だ、君には関係ないよ」
「全くすぐ大声出せば良いと思ってる。これだからガサツなドワーフは・・・」
「確かに関係は無いかもしれないがな、俺の目の前でこんな胸くそ悪いことはさせねぇよ。それでも続けたいなら俺を倒してからにしな!!」
「ふん、興が削がれた。みんな行くぞ」
エルフの集団が此方に向かって来たのでドアの前からどける。エルフ達はこちらを一瞥すると舌打ちしつつ出て行った。
「おい、お前大丈夫か?」
「あ、ありがとうございます・・・」
資料室に入るとエルフの少女を助け起こしているフェブがいた。
「なにがあったんだ?フェブ」
「あ~俺もよく知らん。ただいつものように魔導具の資料あさりに来たら、集団で囲んでネチネチとやってたからイラッときて思わず追っ払っちまった」
とりあえず椅子に座らせた少女を見ながら話す。
「今出て行った奴らなら有名だよ、兄貴。あいつら前衛でありながら全員精霊召還ができるらしくって、それを鼻にかけて他の前衛を見下してるんだ。・・・ていうか兄貴もあったことあるよな」
「すまん。手合わせしてある程度腕のいい奴しか覚えてない」
「兄貴は自分の鍛錬に集中してるからなぁ・・・あいつら剣士なんだけど精霊に頼りすぎて剣の腕前は並以下だしな」
「私、この子知ってるよ、お兄ちゃん。この子精霊術では百年に一人の逸材だって先生方が騒いでたよ」
「へ~、ということは妬みが理由かな?どうなんだ?」
「フェブ・・・聞き方が取り調べみたいだぞ」
「この口調は素だよ!!」
「あ、あ、あ、私が悪いんです。兄さん達は悪くないんです」
「兄が妹をいじめるのかよ!!」
思わず怒鳴るフェブを取り押さえる。
「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい・・・」
さっきまでギリギリ保っていた涙腺が決壊したらしい。
「まったく・・・マイト、飲み物持ってきてくれ暖かいお茶がいいかな。ジュネ、アプリ探してつれてきてくれ。フェブは少し落ち着け」
「わかった」「わかりました」
双子は一斉に資料室から出て行った。
フェブと少女を宥めていると双子が一斉に帰ってきた。
「お茶、持ってきたぜ!!」「アプリ連れてきたよ!!」
2人とも息を切らしつつ尻尾を振りながらほめて欲しそうにしているので頭を撫でておいた。
「よし、とりあえず暖かいお茶を飲んで落ち着きなさい。
アプリは・・・大丈夫か?」
獣人の速度で引っ張られて来たのだろう。アプリは資料室の入り口で座り込んでいた。
「だ、だいじょうぶれす・・・」
「そうか・・・息を整えたら歌って欲しいんだが・・・」
「あ・・・はい・・・いいですよ・・・少し待ってください」
アプリが落ち着くのを待って、以前歌ってもらった精神を静める歌を歌ってもらった。
「♪~♪~~♪♪~♪~~」
ようやく落ち着いたらしくポツポツと事情を話し始めた。
「わ、私の父はエルフの里の有力者です。私はそんな父が外に作った妾の子でした。だから兄とは腹違いになります。兄さんはその後を継ぐものとして英才教育をほどこされてきました。しかしある日私はどこからか聞こえてくる声に呼ばれて、森の中でこの子に出会ったんです」
そう言って手の平を上向きに開くとそこには緑色の女性がいた。その女性は半透明で小さく、薄いヴェールのようなもの一枚で体を隠している。
「森の女王ドルイドの娘、ヒスイと申します、この度は我が主を救っていただきありがとうございます」
「この子は森の枯れそうな木に宿っていて、今にも消えそうになっていました。そこで私に宿る代わりに魔力をわけるという契約をしたんです。それからはこの子が他の精霊との橋渡しをしてくれるので、全ての精霊と対話できるようになりました。村では跡継ぎは精霊との対話ができる者という決まりがあるため、兄さんはヒスイを渡せと言ってくるようになったんです」
「そうか・・・渡していいのか?」
「嫌です!!村で居場所の無かった私の唯一の友達何です」
「そっか、なら決まりだな・・・ヒスイを俺たちにも守らせてくれ。大切な絆、奪わせはしないさ。なぁそうだろフェブ」 「ああ、あんたは悪くない。悪いのは実力が伴わないのに努力を放棄し人を妬んだあいつらだ」
「私も手伝います。私達はパーティですからね。2人が正しいことを成そうというなら全力でバックアップしますよ」
「オイラも協力するぜ兄貴。村に居場所が無いつらさはよくわかるんだ」
「それにあいつらいけ好かない感じだしね」
みんなの意見を確認すると少女に話しかけた。
「というわけだ。ここにいるのは全員あなたとヒスイの味方だよ」
「皆さん・・・ありがとうございます!!」
「あ~お礼とかいいって、照れくさい。俺たちはやりたくてやるんだ。とりあえず自己紹介といくか、俺はフェブ、見ての通りドワーフだ」
「ジャンだ」
「アプリです」
「マイトです。ジャンの兄貴の一番弟子です」
「ジュネです。マイトの双子の妹だよ。あとジャンさんの二番弟子です」
「私はユリです。よろしくお願いします」
とりあえず作戦会議をする事にした。フェブは頭使うのは苦手だと言ってどこかに行ってしまった。
「さて、とりあえずあいつらどうするか・・・」
「ユリは跡継ぎになる気はあるの?」
「私はあの村には居場所が無いので帰りたくないです。そのために冒険者になろうと思いましたし・・・」
「じゃあ手っ取り早いのはユリが継ぐ気が無いことをわからせて諦めさせることかな?」
「いや兄貴、あいつらはヒスイという分かり易く強力な力を諦めはしないと思うよ。あいつらの自尊心を支えるのは精霊術なんだから」
「ん~・・・とりあえず明日の剣術の時間にでも自尊心は折っておくか・・・」
「どうやって?」
「精霊まで使ったのに負けたらあいつらはどうなるかな?」
「さすがに兄貴でも相手の得意分野で挑むのはどうかと思うよ」
「まあ、そちらは任せておけ。後はなるべく一人にならず誰か一緒に行動するといい、相手が直接力に訴えてこないうちは大丈夫だろう」
「はい!よろしくお願いします」
「そんなに固くならないで、私達今日から友達でしょ?」
「そうよ!!友達を傷つける奴は許さない!私の弓の餌食にしてやる」
「はい、落ち着く。いつも言ってるだろ。冷静になれ」
そう言ってジュネの頭を撫でてやる。するとアプリが上目遣いで近づいてきたので反対の手で撫でてみた。 「うふふ・・・♪」「くぅ~ん」
なんか妹が増えた気分だ・・・マーチ元気かな
「なんという、ハーレム。さすが兄貴!!あの気難しいジュネを落とすとは・・・」
「お~う、戻ったぞ~・・・て、何やってんだ。お前ら」
「まあ、気にするな。その手に持ってるのなんだ?」
「あぁ、もしかしたらあいつら実力行使にでるかも知れないからユリ向けの魔導具持ってきた」
フェブの手にはゴツゴツした木の杖の頂点に水色の魔石がついている。
「これは俺が作ったもんだから特に名はないが、そうだなぁ・・・水鏡の杖とでもしようか。精霊術は精霊とのやりとりの隙を狙われやすいから、この杖には反射の魔術式が刻み込まれており、魔力を杖にこめると魔石がその魔力を増幅して、相手の攻撃を反射する。これを使えば時間稼ぎくらいは余裕だろう?」
「あ、ありがとうございます。こんなすごいもの、どうやってお礼すれば・・・」
「ん?お礼?そうだな・・・その杖の使用した感想や改善点などを教えてくれ。次回作以降のアイディアに使うから」
「わ、わかりました」
そうしてとりあえず明日から行動を開始するとして、当初の予定通りマイトたちの勉強を見ることにした。余談だがユリも村では録に勉強させてもらえなかったらしいが、その分知識に飢え、自力で勉強し他の人に学力で追いついたらしい。
そうして勉強を終え寮に戻ると少し体を動かしたくて走り込みに行く事にした。
そして今夜も更けていく。
いじめカッコワルイ
いつも拙作をお読みいただきありがとうございます。




