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晴明が長年のライバルの消滅を確認して、弥和たちの元へと戻ると何故か葛の葉と太陰が来ている。そんな気配はしなかった、と太陰を見るとばつが悪そうに視線を逸らしている。きっと、また母上が太陰に無茶な要求をして断れなかったのだと推測する。
ただため息を着いて怒って来ない晴明を見て、太陰はホッとしたような顔をして隠密に戻った。というか、何も言われない隙に逃げたというべきか。
『晴明さまですね、我らを助けて頂きましてありがとございました!』
九尾たちを代表して、モーリーが進み出てくる。晴明の中の狐の気配を感じ取ったのか、モーリーが不思議そうな表情をしている。異国から逃れてきた一族だと聞いていたから、自分の正体に確信が持てなくて不思議なようだ。
『ふふ。いえ、いいんですよ。モーリー、私はそこの葛の葉という狐を母に持っている半妖のような存在です。ですから、普通の人間とは気配が違います。異国には私のような存在は珍しいかもしれませんね』
『ああ、そうだったのですね。失礼致しました』
『それよりも、弥和の持っているお守り。貴方ですね。とても質のいいお守りをどうもありがとう。あの子に代わり礼を言います』
『いえ、あれは弥和さまへのお礼ですから……!』
晴明が来る少し前、葛の葉にも同じ要件で同じようにお礼を言われていたモーリーは戸惑っていた。弥和は一体、何者なのだろうか。しかも、弥和も狐耳としっぽが生えている。この前のように何かに呪われている気配もないし、良からぬモノが近づいたら自分が渡したお守りが効くはずだ。つまり、あの耳としっぽは天然物ということになるのだ。
今回の一件があり、モーリーたちは葛の葉と晴明の住んでいる信太の森に移り住むことになった。狐とはいえ、異国から来た妖怪だ。また今回のように一族が狙われてしまうかもしれない。
モーリー以外の九尾たちは天后と六合に連れられて一足早く信太の森に出発している。モーリーは葛の葉の計らいで、松蔭神社にいる紅音と会ってから行くことになったのだ。
葛の葉のお陰で、妖力を取り戻した紅音とモーリーは再会を喜んで抱き合って泣いていた。お互いにそれぞれ、郷の長になっているとはいえ大切な友人があんな目に遭っていたのだ。心配だったことだろう。
手紙を送り合うと約束をして、モーリーは葛の葉と晴明、十二天将たちと信太の森へと帰っていった。はずだった。
「ねえ、なんで二人はここにおるん?」
「本を嗜んでいるだけだが」
「そうそう。読んでるだけだぜ」
下関に帰ってきた弥和は、日常の生活に戻ったのだが、問題が派生していた。萩で別れたはずの十二天将・騰蛇と朱雀が人間に変化して職場に現れるようになったからだ。人間に変化した二人は、とても美形な男性で利用者の女性陣にモテていた。
「また晴明さんの命令なん?」
「いや? 主や他の者たちは、早く帰ってこいとやかましいぞ」
なら帰れ。
「俺らのいる場所は、姫。あんたがいる場所さ」
どこで覚えてきたのか、朱雀は弥和に向けてウインクをしてくる。それを見ていた他の利用者たちが、「きゃあっ」と小さく湧いた声を出す。それを見た弥和が、ふうっとため息をして業務に戻った。
帰ったら、絶対に晴明に二人を連れ戻してくれるように手紙を書こうと弥和は心に決めたがそれは叶わなかった。
帰宅すると二人の居候が勝手に決定していて、手紙を書いたそばから見ていない間に捨てられるようになるからだ。
「ねえ、瑠季。助けてよ」
『騰蛇さん、おいしいおやつくれるしなあ。無理かな』
「ひかりっ」
『朱雀さまのお陰で、弥和の身の回りの巡回が楽になったなあ』
「ひーーーーめーーーー!!」
『十二天将さま方のご意向を、わらわごときがどうにか出来るわけなかろう。末席でも神さまなんだぞ。諦めて守られていればよかろう?』
滝夜叉姫の言い分は正しいとしても、一日も立たずに瑠季とふうかりの心を掴んだ二柱、恐るべしである。
がっくりと肩を落とした弥和の足元に、晴明からの手紙を預かってきた式神が慰める。手紙の内容を読んだ弥和は小躍りした。
弥和に話しておかないといけないことがあるとして、晴明が単身で下関にやってくるのだ。




