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 九尾の末裔・モーリー達は、灯音たちの郷から少し離れた所に新しく自分たちの郷を作って暮らしていた。時々、灯音や蒼葉が来たりして楽しく生活をしていた。たまに、滝夜叉姫から弥和の近況を知ったりして交流も続けていた。

 しかし、突然おかしなことが起きた。初めに気づいたのは灯音だった。まず、近い所にいるはずなのに手紙が来ない事が増えた。新しい郷で何かと忙しいのかもしれないと思ったが、そのうちにモーリーの筆跡が変わった。いや、一目見ただけでは変わっていないのだがペンの滲み具合などが今までと違うのである。似たような筆跡の者が代わりに書いているような、そんな気がしたのだ。しかし、手紙から感じる妖力はモーリーのものなのだ。

 確実なものがないと、灯音は郷を離れることができない。まだ、後継者も完全に育っているわけではないし不安に思う者も出てくるかもしれないからだ。灯音は、年配で昔からモーリーのことも知っている狐のおやじに様子を見てきてもらうことにした。彼は年配ではあるものの妖術に長けていて信頼できるのだ。

 結果は異変しかなかった。おやじは何日経っても帰ってこなかったのだ。郷のみんなで手分けをして探したがとうとう見つからなかった。彼の着物の破片でも、なんでもよかったのに跡形もなく【消えて】しまったのだ。

 モーリー達の郷には、何故か辿り着けなかったのでそこまでは探せなかった。靄のようなものがあって、近づきずらく妖力が多いものでないと行けないような雰囲気だった。

『みんな、すまない。私はモーリー達の郷に行ってみようと思う。もちろん一匹ではいかない。吉田さまにご相談したら、下関の高杉さまもご一緒してくださることになった。……何があるのか分からない。もし私が帰って来なかったら桃音。お前は後継者見習いとして、滝夜叉姫さまを頼って下関に新しい郷を作れ』

 灯音の覚悟を聞いて後継者見習いの桃音は、蒼葉と滝夜叉姫に手紙を出した。モーリー達に何か良くない事が起こったこと、灯音が覚悟してモーリー達の郷に行こうとしていること、そして自分が後継者見習いとしてしばらく連絡係になること。

  滝夜叉姫が手紙を受け取った日には、二人はもう郷を出てしまっていた。姫はこれから何があるのか分からないままに、信太の森の"あの方"に助けてほしい旨の手紙を早急に出した。同じ狐だ、自分よりもその辺の内情に詳しいかもしれない。

 ひかりにも瑠李にも、姫は説明した。赤間神宮の平家一族にもだ。ただ、知らないのは弥和だけだ。吉田さまも蒼葉も、弥和が知ったら飛んできそうだからと伝えないことになった。ただ、二人が無事に帰ってくる事をみんな祈っていた。

  二人が郷に行って、二日後のことだった。

 突然、松蔭神社に晋作と灯音、そしていなくなった年配の狐が現れたのだ。たどり着いた、というよりも【転移】してきたように見えたと吉田さまとりんは言った。元人間だったのが幸いしたのか、晋作は郷を出てからの記憶だけが無くなっていただけで済んだ。灯音と年配の狐は、前後の記憶だけではなく目が虚ろになって魂が抜かれたような状態だった。

  桃音が、二人に抱きついて泣いて再会を喜んでも声が届いていないようだったという。連絡をもらって迎えにきた他の狐たちも、目を潤ませて二匹を見つめていたと手紙に添えてあった。

『……これ、おかしいですね』

『ああ……。妖怪だけが魂を抜かれたようになっているらしい。晋作は前後の事だけを忘れているようだ。大事をとってしばらく吉田さまの所にいると書いてあるな』

  ストーカー事件の後から、よく姫の元を訪れるようになった猫又たちは一連の出来事にも心を痛めていた。もちろん、弥和の耳に入れないようにもしてくれている。

『ひめさん、これやっぱおかしいよ。そのモーリーって狐、九尾の末裔なんでしょ?  なら、それなりに妖力には長けているはず。狐の長も狐のおやじだって妖力には自信があったはずだ。記憶がないとか、虚ろになるってのは……』

 みんな言葉には出さなかったが、考えている事は同じだった。何か大きくて力の強い【妖怪】の仕業だと。

『でも、そんな大妖怪がいたら気配とか感じるのでは……?  私たちだって何も感じませんし……。狸の長も分からなかったんですよね?』

 そうなのだ。蒼葉にも狐の後継見習いの桃音にも聞いたのだが、誰もそんな大妖怪の気配を感知していなかったのだ。他の妖力の強い狸や狐たちもである。

『そうなると……。"あの方"に聞いてみるのが一番いいかもしれんな。お前たちも妖怪なんだ。見知らぬ妖怪には気をつけなさい』

『『はい、わかりました』』

 いい返事をして、猫又たちは弥和が帰ってくる前にそれぞれ帰路についた。猫又たちは、妖怪にまだなっていない猫たちにも気をつけるように言って回った。

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