空回り
それにしても、結構フレンドリーに話しかけてくれたなあと思った。あの日、入学式の頃からは想像もできなかったことだった。自信がついたのはとてもいいことだと思った。
(私たち、接点があまり無かっただけで同学年だしね)
嬉しさに浸りながら、取材を始めた。
「それでは、取材を始めますね。皆さん、よろしくお願いします!」
他の部員の方にも挨拶を済ませ、質問をする。
「まずは、皆さんの名前を伺ってもよろしいですか?」
「はい。では初めに、僕から。演劇部の部長をしている3年2組普通科の森 良樹です」
「私は副部長をしています。同じく3年2組普通科の灰田 柚梨です」
誤字が無いようによく確認しながらメモをとっていく。
「続いて、部員の方もお願いします」
「はい。僕は2年C組工業科の小場 大飛といいます。」
「僕は1年1組普通科の仲山 進です」
「私は、1年4組普通科の小田 まいです」
皆の名前を聞き終わり、次の質問へと進む。
(なんか、それっぽい…!)
暁斗と冬弥先輩に見守られながら、取材は順調に進んでいた。
「ありがとうございます。さっそく、質問に入っていきたいと思います」
事前に用意していた質問を投げかける。
「今回の劇はどういった内容ですか?」
「今までに一度公演したことがある劇です。とある部員の父親が元脚本家で、その方が僕達に書いてくださったものなんです。」
「貴族に憧れる平民の少女がお姫様になろうと現実に直面しながら奮闘する物語になっています。内容は元脚本家が書いたと聞くと、少し薄く感じる方もいるかもしれませんが、私たちにとって思い出深い作品なんです。」
部長と副部長がそう答えると部員の方たち暖かい表情を浮べる。私も暖かい気持ちになりながら、メモ帳には書いていない質問を投げかけた。
「とある部員とはどなたですか?」
聞いていて気になった所だった。なぜ濁したのだろうか。気になって仕方がなかった。
「えっと…それは…」
先ほどの雰囲気とは一変、不穏な空気が部室に漂う。
(え…な、なにこの空気。もしかして、まずい質問だった…?)
冷や汗が背中をつたう。どんどん空気が重くなっていくのを感じる。言いづらそうに、部員同士でアイコンタクトを取っている。その光景から、ただ会話を聞いていた2人も察していた。
「夏夜ちゃん、質問変えよう」
咄嗟に冬弥先輩が私に耳打ちをする。
(あ…、そうだよね。雰囲気、変えなきゃ)
怖気づきながらも、メモ帳を開き、質問を探す。やはり、思いつきで行動するのはよくなかった。
「あの、質問を変えますね。えーっと…」
と、言い顔を上げた瞬間、ふと時計が目に入る。
(あぁ、もう5時なんだ)




