先輩と後輩
午後の授業も特に変わったことはなく、現在4時を5分ほど過ぎたところだ。放課後に予定されていた演劇部への取材の準備を急いでし始める。
(廊下が騒がしい…?)
誰かの怒鳴り声がする。この声は……暁斗だ。どんどんこちらへ声が近づいてくる。聞き耳を立てるが薄っすらとしか内容が聞こえない。私が我慢できずに廊下を覗くとそこには、冬弥先輩にあやされている暁斗がいた。
「や・め・ろ!!」
「暁斗くん、髪の毛サラサラだね〜!」
暁斗は頭を撫でられていて怒っていたようだ。全力で冬弥先輩の手を振り払っている。しかし、冬弥先輩がその手を止めることはない。
(なんだか、兄弟みたい)
お昼休みの時とは違い、すっかり仲良く(?)なっている彼らを見て、思わず笑みがこぼれる。私が笑っていることに気づき、暁斗は顔を赤くしながら、駆け寄ってくる。
「おい、夏夜!コイツとめてくれよ~」
眉をひそめて、私の背後に隠れる。兄弟というよりも遊びたい犬と構ってほしくない猫のようだ。
(私としてはもう少し見ていたかったけど…)
時計と目を合わせ、遊んでいるヒマはないことを知った私は冬弥先輩を止めることにする。
「先輩、面白いのは分かりますけど後輩イジリは程々にしてください」
「は〜い。夏夜ちゃんに言われちゃしょうがないよね〜」
「は?夏夜までそんなことは言うのかよ!俺は悲しいよ」
(あ、しまった)
つい、本音が漏れてしまった。トホホと肩を落とした暁斗を横目に、この後の予定を先輩と打ち合わせする。
「先輩はもう準備できましたか?」
「うん。まあ、準備ていうほどのものはないんだけどね」
「夏夜ちゃんこそ、しっかり準備できた?頼まれて取材なんて初めてなんじゃない?」
「はい!なのでいい宣伝ができるように、準備してきました!」
おー!というような表情で先輩は拍手をする。
そんなやりとりをしている間に先ほどまで落ち込んでいた暁斗がいつの間にか私たちの目の前に現れていた。お昼休みの時のような怪訝な顔をしている。やはり、仲良くはなっていなかったのだろうか。少し残念な気持ちになっていると暁斗が口を開いた。
「準備できたんだろ。なら、さっさと行くぞ。遅れても悪いしな」
「そうだね」
不機嫌そうに言いながら演劇部へ向かう暁斗に続き、私たちは取材へと向かう。




