内なる願い
教室へ向かう途中で、あることに気づく。
(そういえば、演劇部へ取材に行くんだった…!)
すぐに、ポケットからスマホを取り出し、暁斗へメールをする。
夏夜「ごめん!今日の放課後予定あった!」
「演劇部の取材」
暁斗「あー!オレも忘れてたわ笑」
夏夜「だから、また今度にしよう?」
暁斗「あー」
「その取材ってどれくらいかかる?」
「夜遅くなる?」
夏夜「うーん、どれくらいかかるかわかんない」
「でも、先輩もいるし、そこは大丈夫!」
暁斗「先輩って、昼休みにきたやつのこと?」
夏夜「そう!」
暁斗「やっぱオレもいくわ、その取材ってやつ」
「いい?」
夏夜「いいけど…、部活とか大丈夫?」
暁斗「今日はオフ」
夏夜「わかった!じゃあ、放課後集合ね!」
暁斗「おけ」
(ふー…耐えた〜)
一安心して、胸を撫でおろす。危ないところだった。それにしても、あの暁斗がついて来てくれるなんて予想もしなかった。明日は雪でも降るのだろうか。そんなことを考えているうちに教室の前へと着いた。
内心ウキウキしながら、教室の扉を開ける。最初はなんともなかったが、入って来た人が私だと気づくと一斉に皆が注目し始める。心配しているような表情をしている。
(あー…)
暁斗のことを思い出す。和解、というか仲直りというか。それをしたものの、噂は私たちだけが知っているものではない。暁斗に対する誤解が解けていない皆にとって、突然教室へやって来て、呼び出されるという出来事は異常なものだろう。しばらくの間が続くうちに、宇佐美さんが私へ駆け寄ってきた。
「大丈夫だった?…あの人に呼び出されたみたいだけど」
「全然大丈夫ですよ!!実は幼馴染なんです!驚きましたよね?すみません。」
精一杯の笑顔を見せながら、弁解する。こうでもしないと皆の誤解が解けることはないだろう。あんな過ちを犯さないよう、誤解を解きたい。これは、私なりの謝罪の意味も込めた行動だった。好かれるとまではいかずとも、せめて噂によって嫌われるようなことはなくしたい。その一心だった。
その行動が功を奏したのか、皆の表情が少し緩んだ気がした。皆は各々の休み時間に戻っていった。言葉はないが、きっと、心の内では少しずつ誤解は解けているだろう。そうであってほしいと願う。
「ふ〜ん?そうなんだ?ほんと?」
宇佐美さんは首を傾げて、覗き込む。
「本当ですよ!嘘、つくわけないじゃないですか!」
「…。脅されたりしてない?」
「全然!」
「そ。まぁ、なんかあったら相談してね〜」
そんなやりとりをしている間に、お昼休みの終わりを告げるチャイムがなる。
半年ほど友達はまだできていないと思っていた。しかし、そんなことはないみたいだ。少なくとも、宇佐美さんがいる。そんな嬉しさと、放課後の楽しみを胸にしまい、午後の授業の準備を始めた。




