がたんごとんと東京へ
東京は簡単に行けるみたいだ、思ってたより。
何一つ決まっていない。
「本当に何も言わずに来て大丈夫?」
「……うん」
「苑乃も、何も言わずに来たんでしょ」
「……うん」
「だったら、一緒だよ」
「……行ってどうする?」
「……」
「……」
「分かんない」
「うん」
「東京に行けば、何か変わると思った」
「……」
「でも、行ったからって何かが変わるわけじゃないよね」
「……うん」
「苑乃は、どうしたい?」
「分かんない」
「そっか」
「……」
「じゃあ、とりあえず行ってみようか」
「それでいいの?」
「うん」
「僕も何がしたいか分からないから」
がたん……がたん……
「……」
「……」
車窓の景色が、知らないものに変わっていく。
僕はそれを、ただ眺めていた。
東京まで、あと何時間なんだろう。
学校が終わって5時間。
多分まだ母さんは帰ってないんだろうな。
姉ちゃんはどうしてるんだろう。
母さんからの連絡はない。
姉ちゃんからもない。
誰も知らない、まだ。
僕が東京に向かっていることなんて。
苑乃がこちらを覗き込む。
「……戻る?」
「……家族が心配なわけじゃないよ」
「本当に?」
「……わかんない」
「…」
「いなくなったって知ったら、どうするかなって」
「……」
「母さんも、姉ちゃんも」
「探すかな」
「どうだろ」
「……」
「でも、帰るつもりはないよ」
「…」
「あの人たちに僕は必要ないから」
「…うん」
がたん……がたん……
「……苑乃は?」
「え?」
「家に戻りたい?」
「……やだ」
「…そっか」
「うん」
車窓の景色が、少しずつ暗くなっていく。
いつの間にか、見慣れた建物もなくなっていた。
「東京、まだかな」
「まだじゃない?」
「そっか」
「……」
「楽しみ?」
「……分かんない」
「私も」
「……」
「今は…ちょっと眠い」
「寝ていいよ」
「かずみくんは?」
「僕は大丈夫」
「そっか……」
そう言って、苑乃は窓に頭を預けた。
数分もしないうちに、寝息が聞こえてくる。
僕は窓の外を見る。
暗くなった景色の中に、時々知らない街の明かりが流れていく。
東京まで、あとどれくらいだろう。
……まあ、着けば分かるか。
僕も少しだけ目を閉じた。
眠るわけじゃない。
ただ、少しだけ。
今までのことを考えていた。
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