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初めての生産、初めての夜

リリィに案内され、俺たちは大森林の奥深くへと進んだ。

たどり着いたエルフの里は、美しい大樹のなかに作られた幻想的な場所だった。しかし、行き交うエルフたちの表情はどこか暗い。リリィの言う通り、子供の姿はまったく見当たらなかった。

「リリィ! 無事だったか! ……ん? そちらの人間は一体……」

里に入ると、立派な髭を蓄えた厳格そうなエルフの族長――リリィの父親が血相を変えて駆け寄ってきた。

リリィは胸を張って、里中に響き渡る大声で言った。

「お父様! 我が里を救ってくださる、至高の生命力を持ったタクト様です! 私、この方の子供を産みます!」

「ぶっっ!?」

族長が目玉が飛び出そうなほど驚き、周囲のエルフたちからも「な、人間と!?」「しかしあの男から感じる魔力は一体……」とざわめきが起こる。

族長は最初、俺を激しく警戒したが、俺の手を握った瞬間、その顔が驚愕に染まった。

「な、なんだこの、大自然そのもののような圧倒的な生命のオーラは……! 枯れ果てた我が大樹の眷属たちが、彼が近くにいるだけで歓喜に震えている……!」

エルフは魔力や生命力に敏感な種族だ。

俺の体内に満ち満ちている【至高の生産LV.99】のエネルギーは、彼らにとって「歩くパワースポット」のようなものらしい。

族長はガタガタと震え、次の瞬間、俺の前に五体投地した。

「タクト殿……いや、タクト様! 頼む、我が娘を、そして里の娘たちを娶り、奇跡の血を授けてくだされーっ!」

「いや、とりあえずリリィさんだけで大丈夫ですお義父さん!?」

こうして、俺はエルフの里の「最高賓客」として迎えられることになった。

◇ ◇ ◇

その日の夜。

里の最高級のコテージに案内された俺は、緊張でガチガチになっていた。

豪勢な食事とお酒(エルフ特製の果実酒で、めちゃくちゃ美味い)をいただいた後、部屋の扉が静かに開いた。

「タクト様……お待たせいたしました」

現れたリリィは、薄いシルクのナイトウェアを身にまとっていた。

月の光に透けるシースルーの生地からは、彼女のしなやかな体のラインがはっきりと浮き上がっていた。白い肌が、恥ずかしさでほんのりとピンク色に染まっている。

「リリィ……本当に、俺でいいのか?」

俺が問いかけると、彼女はいたずらが成功した子供のように、ふにゃりと柔らかく微笑んだ。

「はい。タクト様が魔物を倒してくれたあの瞬間から……いいえ、その前から、私はあなたに運命を感じていました。……私を、あなたの『最初の家族』にしてください」

彼女の細い肩を引き寄せ、優しく抱きしめる。

驚くほど体が軽くて、細い。だけど、抱きしめた肌からは、ドクドクと高鳴る彼女の心臓の鼓動がダイレクトに伝わってきた。緊張しているのは、俺だけじゃないんだ。

「タクト様……あったかいです……」

リリィの手が、おずおずと俺の背中に回る。

エルフ特有の、どこか甘い新緑のような香りが鼻腔をくすぐり、俺の理性をじわじわと溶かしていく。

俺は彼女の顎をそっと持ち上げ、その潤んだ唇に自分の唇を重ねた。

「ん……っ」

かすかな吐息が漏れる。一度、二度と深く唇を重ねるたびに、リリィの身体から緊張が抜け、熱を帯びて俺に寄りかかってきた。

『ピコーン。【至高の生産・創造】の最適対象を検知。条件が達成されました。――生命生産プロセスを開始します』

脳内に響くシステム音。しかし、今の俺にはそれすら心地よいBGMのようだった。

俺の体内で、これまで眠っていた莫大な「生命魔力」がドクドクと脈打ち始める。それは俺自身の身体を芯から熱くさせ、同時にリリィの身体にも伝播していった。

「あ、はぁ……っ、タクト様、なんだか、身体が……すごく、あつい、です……」

リリィの白い肌が、またたく間に淡い桜色に染まっていく。

俺の手が彼女の滑らかな背中を滑り、ナイトウェアの肩紐をそっと押し下げた。

月の光の下に露わになった彼女の素肌は、まるで極上の絹のようで、触れるだけで指先が吸い付くようだ。

「タクト様、私を……あなたの力で、いっぱいにしてください……」

恥ずかしさに耐えかねたように、リリィは俺の胸元に顔を埋め、小さな声で強請ねだるように呟いた。

その熱い吐息が胸に当たった瞬間、俺のなかの何かが弾けた。

ゆっくりとリリィをベッドへ組み敷く。長い金髪がシーツの上に広がり、まるでファンタジーの絵画のような美しさだ。

「優しくするからね、リリィ」

「はい……っ、あなたになら、どこまでも……」

重ね合わされた手と手。

俺から溢れ出る黄金の生命魔力と、リリィの持つ清らかなエルフの魔力が、部屋の中で光の粒子となって幻想的に舞い踊る。

互いの肌が密着し、熱と熱が完全に交わり合う。

リリィの苦悶とも歓喜ともつかない、甘く切ない悲鳴が、静かな夜のコテージに何度も、何度も優しく響き渡った。

それは、世界のどこよりも濃厚で、どこよりも温かい、新しい命を生み出すための、至高の生産の時間だった――。

◇ ◇ ◇

――それから、数ヶ月後。

「タクト様! 産まれます! 産まれますよ!」

里の助産師のエルフが慌てて俺の部屋に飛び込んできた。

俺は心臓が破裂しそうなほどバクバクさせながら、リリィの寝室へと駆けつける。

普通、エルフの妊娠期間は人間に比べて数年と長く、出産も命がけだと聞いていた。しかし、リリィが懐妊してから、まだほんの数ヶ月しか経っていない。これもスキルの効果なのだろうか。

「リリィ! 大丈夫か!?」

「あ、タクト様……。ふふ、全然平気ですよ? なんだか、お腹の底から元気が湧き出てくるみたいで……あ、出ます」

「えっ、もう!?」

『ピコーン。スキル効果【母体完全保護】【超・安産】が発動しました』

リリィが「ふんっ」と小さく一息ついた瞬間、寝室に「おぎゃあぁぁぁ!」と、信じられないほど元気な赤ちゃんの産声が響き渡った。

苦しむ様子なんて微塵もない。リリィは出産直後だというのに、肌はツヤツヤ、顔色も抜群に良い。

「おめでとうございます! 滅茶苦茶に元気な、可愛い女の子です!」

助産師が抱き上げた赤ん坊を見て、俺とリリィは顔を見合わせた。

生まれたばかりなのに、その子はすでに金色の髪をうっすらと生やし、クリクリとした大きな目で俺たちを見つめていた。

そして、俺の脳内にトドメのアナウンスが流れる。

『ピコーン。生命生産が完了しました。

個体名:未定エルフ・ハーフ

獲得固有能力:【大自然の寵愛(農業・植物創造LV.MAX)】

※スキル特典により、対象は超高速で健康的に成長します』

「……え?」

俺が呆然としていると、腕の中の赤ちゃんが、なんとニッコリと微笑み、

「ぱ、ぱ……!」と、小さな声で言葉を発したのだ。

生まれたてなのに、もう喋ろうとしてる!?

しかも【植物創造LV.MAX】って、俺が一番欲しかった生産スキル、子供が持って生まれてきちゃったよ!

「タクト様、見てください。この子が笑っています……! ああ、なんて愛おしいのかしら。……ねぇ、タクト様?」

リリィは幸せそうに赤ん坊をあやしながら、上目遣いで俺を見て、悪戯っぽく微笑んだ。

「この調子なら、私、あと10人は産めそうです。……あ、大樹の広場の方にも、タクト様の順番をずっと待ってる女の子たちが集まってるみたいですよ?」

窓の外を見ると、コテージの周りには「次は私を……!」と言わんばかりに、そわそわした様子でソワソワと待機しているエルフの美女たちの行列ができていた。

モノは作れない。だけど、俺の作る家族は、どうやら世界最強の開拓団になりそうだった。

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