瑕疵物件(8)
日付 5年前の今日
[M]
(自分の部屋?でも置いてあるものが違う。)
「ピンポーン」
呼び鈴が鳴り、玄関へ向かいました。
[大家]
「トキタさん、もしかして起こしちゃった?ごめんね。今日ってなんか予定あったりする?」
少し若返った大家が優しい表情で聞いてきます。
[トキタ]
「今日は午前中に祈りを捧げにクメさんのところに行きます。午後は特に予定はありませんけど。」
[大家]
「じゃあさ午後に戻ってきたら、上の201号室に来て。手伝ってもらいたいことがあるんだけど。」
[トキタ]
「あぁいいですよ。祈りが済んだら行きます。」
[大家]
「よろしく頼むよ。」
扉が閉まる、トキタって誰だ?
洗面所に向かって鏡を見てMは驚きました。鏡にうつっているのはM自身ではなく、昨日の夜に風呂の戸に張り付いていた男の顔でした。また意識を失いかけましたが何が起こったのか理解をしました。
今Mが見ている景色は全てあの男「トキタ」の記憶であることが判明しました。だから過去に戻っているわけだし、置いてあるものも違うし、大家が若いワケだと。ここからは自動再生されるかのごとく物事が進みました。トキタが歯を磨き、着替えて、クメという人間の元へ向かうところまで。
クメは隣町に住んでいる老婆でした。何度か面識があり付き合いが長いような感じがしました。そして祈りのために別室に行きます。別室に入ると壁にズラッと例の宗教の札が張ってあり、目の前には仏壇のような壇そして両サイドに札に書いてあった掌の中央に目がついている絵の置物がありました。割と大きめの。
クメが別室から出ていったところで祈りが始まりました。内容は今からさらに5年前の供物になった人に向けたものでした。祈りが終わり、クメに挨拶をしてから
アパートに戻っていきました。
アパートに着いたのは13時前、2階の部屋のほうで大家が部屋から物を出している。
[大家]
「トキタさんおかえり、祈りは済んだ?」
[トキタ]
「はい、祈りを捧げてきました。それで手伝ってほしいことってなんですか?なんかいろいろ部屋から物出してますけど。」
[大家]
「手伝ってほしいことはね、2階のこの部屋で祈りを捧げられる場所にようにしようと思ってさ。それを作る手伝いをしてほしいんだ。」
「ほらクメさんってもうだいぶ歳とってるし、いつ亡くなるかわからないし、あと家に行ってもいない時もあるからもう近場に作っちゃおうってことよ。このアパートの人とかほぼ全員信者じゃん?」
[トキタ]
「確かに近くにあるのはだいぶありがたいですね。」
[大家]
「とりあえず、ちょっと休憩するから14時になったら2階来て。」
14時になり2階に向かいました。部屋の中にあった物はすでにほとんど出されていました。
[大家]
「よし、じゃあ残りの物も出しちゃって部屋の掃除をしよう!」
[トキタ]
「そういえばこの部屋にある物とかは全てフジサワさんのですか?」
今になって大家の苗字を知りました。
[大家]
「そうだね前住んでた家が小さくて、物置く場所がなくてこのアパートの一室を物置き部屋にしてたんだけど最近新しく家建ててさ、大きくなって物がたくさん置けるようになったから全部家に移すことにしたんだよ。」
「まぁ、入居者入れようかなって思ったんだけど他の部屋も空いてるしいいかってなったから祈る場所にしちゃおうって決心したわけ。」
[トキタ]
「そうなんですね。」
そこからどんどん片付けていって18時前には部屋が完成していた。
[大家]
「明日みんなにこの部屋のお披露目会をするか。
きっと驚くと思うよ。」
大家はとても嬉しそうな表情で話していました。
しかしトキタはなにか言いたそうな面持ちでいた。
[大家]
「トキタさんどうした?嬉しくないのかい?」
[トキタ]
「いいえ、できたのは嬉しく思います。今話しておきたいことがあるんです。」
[大家]
「話して起きたいこと?いったい何を話しておきたいんだい?」
「トキタ」
「もうあの時期ですよね。今年の供物はどうするのですか?その供物のことで相談があります。」
[大家]
「供物のことね、それは明日お披露目会の時に話そうと思ってるよ。で、供物の相談って?」
「トキタ」
「供物に生身の人間を捧げるの辞めませんか?今回からは何か作り物を捧げたりするのとかどうです?」
その時大家が見せた表情は以前Mに見せたあの悉くを消す表情と同じでした。そしてまた一瞬にして元の優しそうな表情に戻る。
[大家]
「そうか、それも明日お披露目会の時にみんなにはなしてみるか。とりあえず今日は疲れたでしょう、早く休みなさい。」
そうしてトキタは自身の部屋へと戻っていった。
日付が変わってトキタが眠りに就こうと思った時、
「ピンポーン」呼び鈴がなった。
扉を開けて出ると大家とその周りにあの爺さん(カワタ)と見知らぬ大男がいた。トキタはそのまま大男と爺さんによって手足を拘束されて2階の祈る部屋へとつれていかれた。




