瑕疵物件(6)
しばらく走ると誰もいない公園についていた。
石のドーム型遊具の中に入り辺りを見回してから、震える指でSの知人の電話番号を打ち込み、連絡を試みました。幸いにもSの知人はすぐに電話に応じてくれました。
[M]
「もしもし今さっき大家に家のことを確認しました。まず殺人があったのは確かなのですが、部屋の外で亡くなった扱いになっているので告知義務は発生しないそうです。それで、心霊現象のことも報告したらお祓いを手配してくれるらしいんですけど自分はその時に処置をすると近所の住民が話していて今逃げ出して安全な所から連絡をかけています。」
とても焦っていた為、間をおくことを考えずにマシンガンのように伝えてしまっていた。
[知人]
「ち、ちょっと待ってください。急にそんなに言われても処理しきれないんで1個ずつ物事を整理しましょう。まずあの部屋は殺人には使われていなかったのですか?」
[M]
「はい、前の住人は部屋の外で亡くなった扱いになっているので瑕疵物件の告知義務は発生しないそうです。」
[知人]
「それで、心霊現象の事を伝えてお祓いをしてくれるとなったんですよね?」
[M]
「そうです。大家と話した時はなるべく早く手配をすると言ってました。それで大家の家を出て、自分のアパートに戻った時に近所の人が話してたんですよ。」
[知人]
「処置のことですよね、処置についてどんな会話をしてました?」
[M]
「アパートに戻って来た時に上に住んでる爺さんと自分と同じ階の角部屋の中年夫婦の妻の2人で話していたんです。内容は「そろそろあの時期だ」とか「供物にするならあの若い子か」とか若い子に当たるのは自分だと思います。自分が大家の家からアパートに向かっている数分間に大家は爺さんに自分の処置の日程の話をしていたそうで、およそ1週間後に自分は処置されるそうです。供物とか処置って自分、殺されるのですかね?」
[知人]
「多分そうですね、だいぶ早く事が深刻になってますね…、それでも丁度タイムリーな話があるんです。実はあの後に例の宗教について深く調べてみて、これは恐らくというか確実に触れてはいけないのですが、あの宗教は「5年に一度供物」を捧げるそうです。その捧げる供物というのが人の頭部と両手になり、供物を捧げることによって完全に罪を水に流せます。本当にタイムリーですよね。」
・5年前の今頃に前の住人が殺される
・頭部と両手の供物と首から上と手がない幽霊
・ちょうど今年が5年目、Mの処置
[知人]
「Mさん、もうこのアパートから早急に出たほうがいいです。身に危険が迫りすぎています。部屋に戻り次第逃げるための準備をし始めといてください。詳細は追って連絡します。今日は申し訳ないのですけど本当にお気をつけてお帰りしていただいて、戻っても普段と変わらない感じで生活をしてください。最後に、今回の話と私の名前は他言無用厳守でお願いします。Mさんだけでなく、私やMさんの身の回りの方々が危険に晒されるかもしれませんので。それでは。」
そして電話は終了した。しばらく遊具の中でうずくまってから不安や恐怖がありながらも重い足を上げてアパートに戻って行った。
部屋の扉の前に立ち、逃げる準備をしなきゃと思って鍵を開けて扉を開くと、今までで一番重たく、澱んだ空気が肌に触れた。恐らく、この重たい空気の正体はあの霊の仕業かもしれない。日に日にこの部屋の状況が悪くなっているのは感じていたが、このアパートのことや、住人のこと、例の宗教のことを知れば知るほどあの霊の力も増していっているのだと、そんな気はしていた。
だが自分には逃げるための準備をしなければならないという使命があり、重い空気を漂わす自分の部屋に入っていった。




