第93話:交差する時間
1日2回更新。
光也は授業の合間にスマホを開いた。Lunaの配信履歴をもう一度確認する。前の世界で経験したはずの炎上はどこにもなく、平和そのものだった。
(やっぱり……何かが違う。)
記憶と現実のズレを感じながら、ぼんやりと教室の喧騒を聞いていた。クラスメイトが談笑する中、ふと聞き慣れない名前が耳に入る。
「夕真ってさ、最近よくここにいるよな。」
「まあ、もともとそういうヤツだろ。」
光也の手が止まった。
——夕真?
彼はその名前に聞き覚えがなかった。いや、正確には、自分の記憶には一切存在しない人物だった。
(夕真……? そんなヤツ、このクラスにいたか?)
違和感が喉の奥に引っかかったまま、光也は何気なく教室を見渡した。
すると、教室の後ろの席に、一人の男子生徒が座っていた。光也はその顔に見覚えがなかった。しかし、周囲の生徒たちは彼を“以前からいるクラスメイト”として普通に接している。
「おい、夕真、次の授業のノート貸してくれよ。」
「ったく、お前またサボってただろ。」
ごく自然に交わされる会話。それが光也に、さらなる疑問を植え付けた。
(そんなはずない……俺はこいつのことを知らない。でも、クラスのみんなは知ってる?)
光也は自分の記憶と、今目の前に広がる現実の違いを、はっきりと理解した。
(この世界は……前とは違う。)
違和感は確信へと変わり始めていた。
最終章スタート。100話で完結。




