第92話:歪んだ déjà vu
1日2回更新。
光也はスマホの画面を見つめていた。
Lunaの配信が始まったばかりのはずなのに、コメント欄は驚くほど穏やかだった。かつての世界では、彼女の配信は誹謗中傷の嵐にさらされ、ファン同士の争いが絶えなかったはずだ。
——いや、それが普通だったはずなのに。
流れるコメントはどれもポジティブなものばかり。「Luna最高!」「今日も可愛い!」「新曲楽しみ!」——この空気は異常なほど清らかだった。
光也は何度も画面をスクロールし、過去の記憶と照らし合わせた。しかし、どこを見ても炎上の影はない。
(何が……変わった?)
同じ頃——。
未来は部屋の中でイヤホンをつけ、Lunaの配信を視聴していた。けれど、どこか落ち着かない。Lunaの話し方や、配信の進行自体に違和感があった。
(この配信、前に見たことがある……? いや、そんなはずは……)
以前の世界で経験したはずの出来事とは、微妙に異なっている。それはまるで、同じ映像の中に別の流れが入り込んでいるような感覚だった。
愛瑠もまた、Lunaの配信を眺めていた。もともと彼女はEchoのファンとして推し変していたはずだった。しかし、気づけばLunaの配信に戻ってきている自分がいた。
(……私は、なんでここにいるんだろう?)
心の中に違和感が生まれる。昨日までの自分が見ていた世界と、今の世界がズレているような、そんな感覚。
一方、夕真は夜の街を歩きながらスマホを開き、Lunaの配信を確認していた。
(こいつは……前と何かが違う。)
Lunaの声は変わらない。だが、その存在感がまるで別人のように感じられた。
4人はそれぞれ、別の場所でLunaの配信を見ながら、同じ違和感を抱いていた。
彼らの記憶が間違っているのか。それとも——世界の方が、変わってしまったのか。
最終章スタート。100話で完結。




