第85話:迷いの色彩(前編)
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愛瑠は静かな部屋の中、スマホを手に取り、Echoの配信を眺めていた。
画面の向こうでEchoは、いつもと変わらぬ柔らかな声で話している。コメント欄は活発に流れ、視聴者たちは楽しげに言葉を交わしていた。愛瑠も、無意識のうちに指を動かし、画面に軽く触れる。
“今日も楽しかった”
何気ないコメントを打ち込みながら、どこか自分がそこにいないような感覚を覚えていた。
——私は、本当にここにいるべきなのかな。
Luna推しだったころの自分を、もうすっかり過去のものにしていたはずだった。けれど、ふとした瞬間に心の奥底から迷いが浮かび上がる。
そのとき——画面が一瞬暗くなり、ノイズが走った。
「え?」
愛瑠が驚く間もなく、Echoが画面の向こうから、まるで彼女だけに語りかけるように静かに微笑んだ。
「推し変したこと、後悔してる?」
愛瑠の指が止まる。
胸がざわついた。何か言葉を返そうとするが、喉の奥が詰まったように声が出ない。
「私は……」
言葉にしようとすればするほど、思考がまとまらない。
自分の選択は、本当に正しかったのか——。
Echoはただ、画面越しに穏やかに彼女を見つめていた。
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