第62話:初めての言葉
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光也は立ち止まり、息を整えた。目の前には未来がいる。
今まではSNS越しのやり取りだけだった。それでも何度も会話を重ねてきたから、お互いのことはよく知っているつもりだった。しかし、こうして実際に顔を合わせるのは初めてで、光也の胸の奥で緊張が静かに膨らんでいた。
「……未来?」
思い切って名前を呼ぶと、彼女は少し驚いたように目を瞬かせた。だが、すぐに表情が和らぎ、口元に微笑みが浮かぶ。
「光也くん?」
その声を聞いた瞬間、光也はふっと肩の力が抜けるのを感じた。どこかぎこちないながらも、未来は自然に応じてくれている。それだけで安心した。
「うん。はじめまして、かな?」
「うん、はじめまして。」
未来は嬉しそうに笑った。その笑顔は、画面越しに見ていたものと同じでありながら、それ以上に温かさを感じさせた。
お互いに顔を合わせたことで、一気に実感が湧いてくる。今までは文字やスタンプでしか交わせなかった会話が、こうして声となって響く。光也はその不思議な感覚に包まれながら、改めて未来の顔をしっかりと見つめた。
「なんか、変な感じだな。ずっと話してたのに、今さら自己紹介してるみたいで。」
「ほんとだね。でも……こうやって直接話せるの、すごく嬉しい。」
未来の言葉に、光也の胸が温かくなる。思い切ってここまで来てよかった。そう思えた。
「俺も。ずっと会ってみたいって思ってたから。」
「私もだよ。」
二人の間に流れる空気が、ゆっくりと緊張から安堵へと変わっていく。会場のざわめきの中で交わした、初めての言葉。それは、これから始まる新しい関係の幕開けのようだった。
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