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「僕と世界と推しと」  作者: - 晩26 -
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第62話:初めての言葉

毎日2回更新

 光也は立ち止まり、息を整えた。目の前には未来がいる。


 今まではSNS越しのやり取りだけだった。それでも何度も会話を重ねてきたから、お互いのことはよく知っているつもりだった。しかし、こうして実際に顔を合わせるのは初めてで、光也の胸の奥で緊張が静かに膨らんでいた。


 「……未来?」


 思い切って名前を呼ぶと、彼女は少し驚いたように目を瞬かせた。だが、すぐに表情が和らぎ、口元に微笑みが浮かぶ。


 「光也くん?」


 その声を聞いた瞬間、光也はふっと肩の力が抜けるのを感じた。どこかぎこちないながらも、未来は自然に応じてくれている。それだけで安心した。


 「うん。はじめまして、かな?」


 「うん、はじめまして。」


 未来は嬉しそうに笑った。その笑顔は、画面越しに見ていたものと同じでありながら、それ以上に温かさを感じさせた。


 お互いに顔を合わせたことで、一気に実感が湧いてくる。今までは文字やスタンプでしか交わせなかった会話が、こうして声となって響く。光也はその不思議な感覚に包まれながら、改めて未来の顔をしっかりと見つめた。


 「なんか、変な感じだな。ずっと話してたのに、今さら自己紹介してるみたいで。」


 「ほんとだね。でも……こうやって直接話せるの、すごく嬉しい。」


 未来の言葉に、光也の胸が温かくなる。思い切ってここまで来てよかった。そう思えた。


 「俺も。ずっと会ってみたいって思ってたから。」


 「私もだよ。」


 二人の間に流れる空気が、ゆっくりと緊張から安堵へと変わっていく。会場のざわめきの中で交わした、初めての言葉。それは、これから始まる新しい関係の幕開けのようだった。

Xにも同時投稿中。X版はイメージ画像付き。

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