第60話「交わる想い」
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イベント会場の入り口まであと少し。未来は深呼吸をしながら、自分の鼓動を落ち着かせようとしていた。
「大丈夫……大丈夫……」
自分の姿が、駅のガラスに映る。私はLunaじゃない。Lunaに憧れ、Lunaを好きでここに立っているだけ。
それなのに——なぜ、こんなに不安になるのだろう?
スマホの画面を開くと、SNSには「#イベント楽しみ!」というタグが並んでいた。そこには、自分と同じようにコスプレを楽しみにしている人たちの投稿もあれば、ファン同士で交流を約束するやり取りもある。未来はその画面を見ながら、自分の投稿をしようか迷ったが、指は動かなかった。
(私は、何を期待しているんだろう……)
Lunaを好きな気持ちに嘘はない。でも、Lunaに似ていると言われることが、自分の価値になりつつあることが、どこか引っかかっていた。
そんなとき——スマホに通知が届いた。
「イベント、楽しんで」
たった一言。でも、そのメッセージに未来は少しだけ肩の力が抜けるのを感じた。
「……うん、楽しむよ」
誰に向けて言ったのかわからない独り言を呟き、未来は一歩、会場へと踏み出した。
——その頃、それぞれの想いを抱えた人たちが、未来と同じ場所へ向かっていた。
光也は、ただ純粋に未来のコスプレを応援するために。
愛瑠は、「好きなことを貫く勇気」をくれた未来の姿を見届けるために。
そして夕真は、「推し活に向き合う最後の答え」を見つけるために。
彼らはまだ互いの存在を知らないまま、同じ場所へと歩みを進めていた——。
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