第53話「衣装の向こう側」
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SNSの通知が止まらなかった。
「Lunaにそっくり!」「本物かと思った!」「すごい完成度!」
綾月未来の投稿には、そんなコメントが次々と寄せられていた。
最近、未来はLuna推しのコミュニティ内で注目を集めるようになっていた。
きっかけは光也との交流だった。彼は未来のコスプレを高く評価し、「Luna愛を感じる」と絶賛してくれた。そして、その投稿が拡散され、Lunaファンの間で未来の名前は徐々に知られるようになったのだ。
最初は嬉しかった。自分のコスプレが認められること、Luna推しとして共感を得られること。
けれど、時間が経つにつれ、未来の心に小さな違和感が芽生えていった。
——私が評価されてるんじゃなくて、「Lunaに似てる」から注目されてるだけなんじゃないか?
「未来さん、今度のイベント、Lunaの新衣装のコスプレするんですか?」
そんなDMも届くようになった。求められているのは、あくまで「Lunaそっくりの自分」。
未来は鏡の前に立ち、自分の姿を見つめた。
どこを見ても、ただの高校生の女の子。だけど、Lunaの衣装を着れば、コミュニティの中で特別な存在になれる。
「私……Lunaが好きだからコスプレしてるんだよね?」
思わず独り言が漏れる。
光也との会話も、どこか変わり始めていた。
「未来ちゃんのLuna、本当にすごいよ。どんどん有名になってるし、もっと活動の幅を広げてもいいんじゃない?」
光也は純粋に未来を応援しているようだったが、その言葉がなぜか未来の胸をざわつかせた。
彼は私を「未来」として見てくれているのか? それとも「Lunaのコスプレイヤー」として見ているのか?
そんな迷いを抱えながら、未来はスマホの画面を閉じた。
衣装の向こう側にいる自分を、誰がどう見ているのか。それを考えるほどに、未来の心には薄暗い影が差し始めていた。
Xにも同時投稿中。X版はイメージ画像付き。
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