第52話「鏡の中の私」
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全身鏡の前に立ち、綾月未来はそっとスカートの裾を広げた。
「……やっぱり、似てるのかな」
目の前に映るのは、Lunaのライブ衣装を忠実に再現した自分の姿。パステルカラーのリボン、キラキラと輝く装飾、ふわりと広がるスカート——すべてがLunaそのものだった。
SNSでは「本物そっくり」「Lunaの生き写し」なんて言われることもある。けれど、それは衣装とメイクの力ではないだろうか?未来自身がLunaになれるわけではない。
(私が好きなのはLuna。なのに、私がLunaみたいになって、それで喜ばれるって……)
どこか違和感を覚えながらも、未来はスマートフォンを手に取った。最近は光也とのやり取りが増えている。彼は本当にLunaが好きで、その想いがまっすぐ伝わってくる。未来も、彼と話す時間が楽しかった。
——でも、それは"私"に興味を持ってくれているのだろうか?
着飾った自分ではなく、普段の自分を知ったら、光也はどう思うのだろう。
そんな考えが頭をよぎった瞬間、スマートフォンの通知音が響いた。
「未来さん、次のイベントで直接会わない?」
光也からのメッセージだった。
(直接……会う?)
未来の胸が、小さくざわめく。
コスプレイヤーとして活動を始めてから、SNS上での交流は慣れていた。でも、リアルで会うとなると話は違う。ましてや、光也はLuna推しのコミュニティの中でも特に熱心なファン。彼の目の前で"Lunaにそっくりな私"として立つことに、自信が持てるだろうか?
「考えてみます」
未来はそう短く返事を打った。
鏡の中の自分を見つめる。これは"私"なのか、それとも"Lunaに似せた私"なのか。
衣装の華やかさとは裏腹に、未来の心には小さな迷いが広がっていた。
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