第49話 - Luna推しの終わり
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愛瑠はスマートフォンを握りしめたまま、画面を見つめることができずにいた。
Lunaの最新配信が始まっているはずだった。通知も届いていたし、タイムラインでは「今日も最高!」「Luna、かわいすぎる!」といったコメントが流れている。
しかし、愛瑠は再生ボタンを押せなかった。
彼女のTLには、Luna推しのコミュニティ内での争いや、匿名アカウントによる嫌がらせの痕跡が広がっていた。
「Luna推し、最近変な奴多すぎ」
「新規が幅利かせてるの、マジでムカつく」
「にわかのくせにでしゃばるな」
以前なら気にしなかった言葉が、今は鋭い棘となって愛瑠の心を突き刺した。
ほんの少し前まで、このコミュニティは彼女にとっての“居場所”だった。Lunaの歌や笑顔を愛する人たちと、同じ熱量で語り合うことができた。推しを応援することが、日々の支えになっていた。
けれど、いつからか歪み始めた。
推し活をしているはずなのに、誰かを攻撃することが目的になっている人がいる。気に入らない意見を排除しようとする空気。愛情が憎しみに変わる瞬間を、何度も目の当たりにした。
そして、彼女自身もその標的になった。
「運営に媚びて認知されたって嬉しいの?」
「こいつ、絶対裏で何かやってる」
「Lunaに近づこうとしてるの、見え見えでキモい」
そんな言葉を見ても、最初は「自分のことじゃない」と思おうとした。でも、実際に自分の名前が出た時、恐怖で手が震えた。
そして、気づいてしまった。
――私がLunaを好きでいる限り、この攻撃は終わらない。
涙が落ちる。スマートフォンの画面に映るLunaのアイコンが滲んでいく。
彼女の歌が好きだった。笑顔が好きだった。推し活をしている時だけは、自分を好きになれる気がした。
でももう、純粋に楽しめなくなってしまった。
指が震えながら、Lunaの配信画面を閉じる。Lunaのアカウントを開きかけて、躊躇う。
今、フォローを外せば、全部終わるのだろうか?
推し活のない自分なんて、想像できなかった。だけど、これ以上傷つくのも怖かった。
愛瑠は、深く息を吸い込む。そして、何かを振り払うようにスマートフォンを伏せた。
彼女の推し活は、終わりを迎えようとしていた。
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