第32話 - 淀む視界
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黒崎夕真は、またも深夜にSNSを覗き込んでいた。Lunaのタグで検索をかけ、ファンの投稿を一つ一つ丹念に確認する。応援するコメント、可愛いと称賛する言葉。それらを見ながら、彼の胸の奥に潜む暗い感情が徐々に膨らんでいく。
「お前らにはLunaの本当の良さなんてわからないだろう…」
心の中で呟きながら、スクリーンに映る他のファンの投稿に視線を這わせる。彼にとって、Lunaは「唯一無二」の存在だった。だが、他のファンがその存在を共有し、賛辞を送るたび、夕真の中には苛立ちが広がる。
その夜、特定の一人の投稿が彼の目に留まった。それはLunaの配信画面を映した画像に、「今日もLunaは最高だった」と短い言葉が添えられたものだった。普段なら流していただろう。しかし、その投稿者のアカウント名をクリックした瞬間、夕真の眉が微かに動いた。
「こいつ…また目立とうとしているのか」
そのアカウントは以前から目立つ活動をしており、Luna本人にも配信中に名前を拾われることが多かった。他のファンたちもその人物を中心に交流している様子だった。
夕真の指が震える。投稿者に対する嫉妬と怒りが、一気に彼の理性を揺さぶる。すぐさま偽のアカウントを作り、コメントを送り始めた。
「お前、Lunaをダシにして注目されたいだけだろ?」
「本当にLunaのことを思っているのか?」
匿名という仮面の裏で、夕真は自分の中の歪んだ感情を吐き出す。画面の向こうで何が起こっているのかは分からない。それでも、何かしらの反応を得るたびに、心の中のモヤモヤが一瞬だけ和らいだ気がした。
夜が更けるにつれ、夕真の行動はさらにエスカレートしていった。投稿者だけではなく、その周囲のファンたちにも攻撃的なコメントを送りつける。彼にとって、それは「Lunaを守るための正義」だった。
「誰もLunaを奪わせはしない…」
その言葉は、やがて自分自身に対する呪いのように響き始めていた。
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