エピソード3 偽りの潔白
ルドルフォは、静かに口を開いた。
「陛下は、あの公爵についてお調べになりました」
「すると……」
「何人もの女性を騙していることが分かりました」
アランの表情がわずかに変わる。
「結婚詐欺師?」
「はい」
ルドルフォは頷いた。
「陛下はアデリーナ王女に、あの男を信用してはいけないとお伝えになりました」
「ですが……」
ルドルフォは少し困ったように微笑んだ。
「王女は聞く耳を持ちませんでした」
「なぜ?」
アランが尋ねる。
「『どうして? あんなに優しい人なのに』と……」
アランは黙っていた。
「王女はジルベール公爵を信じていました」
ルドルフォは一度、視線を落とした。
「そして、陛下から聞いたことを、そのまま公爵に伝えてしまったのです」
「……その結果?」
「公爵は、こう言ったそうです」
ルドルフォは、まるでその場にいたかのように淡々と続ける。
「『私が結婚詐欺師だというのなら、それを証明できるものをお見せします』と」
アランが眉を上げる。
「そして、この写真を王女に渡した」
「はい」
ルドルフォは、テーブルの上に置かれた写真へ視線を向けた。
「公爵は、この写真が自分の潔白を証明するものだと言ったそうです」
アランは写真を手に取った。
そこには、楽しそうに笑う男女の姿が写っている。
「……これが?」
「はい」
「何を証明する写真なんだ?」
ルドルフォは静かに答えた。
「それを、陛下がお知りになりたいのです」
アランは写真を見つめた。
しばらくして、ぽつりと言った。
「……なるほど」
アランの目が細くなる。
「この写真が本物なら、何かが証明される」
「はい」
「なら、まず写真そのものが本物か確かめる必要がある」
ルドルフォは黙って頷いた。
アラン
「ひとつだけお聞きしたい事があります」
ルドルフォ
「なんでしょうか?」
「探偵じゃなく、なぜ僕に?」
「陛下は、探偵をお望みではありませんでした」
アラン
「……なぜ?」
「今回、陛下がお知りになりたいのは、ジルベール公爵の素性ではありません」
「この写真が本物かどうか。それだけです」
アランは黙って写真を見る。
「そして……」
ルドルフォが続ける。
「あなたのことを推薦した者がおります」
「誰?」
「陛下の知人で、あなたの記憶力と観察力についてご存じの方です」
アランがルドルフォを見る。
ルドルフォ
「今はその方のお名前を申し上げられません」
アランは小さく息を吐く。
そして
「本物かどうか分からない。だから専門家に見せる」
「分かりました。よろしくお願いします」
アラン
「連絡方法は?」
ルドルフォは一枚の名刺を差し出した。
「こちらに掛けて頂ければ、私個人の番号です」
アランは名刺を受け取る。
「分かりました」
「では、失礼いたします」
扉が閉まる。
アランは小さく息を吐くと
コーヒーを飲み干した。
エピソード3 完。
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次回、「エピソード4 ウィルとの出会い」です。




