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エピソード2  王女と公爵

数ヶ月前。


ルヴェリア王国の王宮では、春の陽射しが降り注ぐ庭園で、ガーデンパーティーが

開かれていた。


色とりどりの花が咲き誇る庭園には、

白いテーブルクロスが掛けられたテーブルが並び、招待客たちがグラスを片手に

談笑している。


弦楽器の柔らかな音色が庭園に流れ、

使用人たちは料理や飲み物を運んでいた。


その中に、一人の少女がいた。


淡いピンク色のドレスに身を包んだ

アデリーナ王女。


招待客に笑顔で挨拶をしながらも、

時折、少しだけ緊張したように辺りを

見回している。


「アデリーナ様」


声を掛けられ、振り返る。


「はい?」


「こちらのお菓子はいかがですか?」


テーブルの上には、

小さな焼き菓子が並んでいた。


「まあ……美味しそう」


アデリーナが嬉しそうに微笑む。


その時だった。


庭園の入り口から、

一人の男が姿を現した。


ジルベール公爵。


落ち着いた色の正装に身を包み、

招待客たちに軽く挨拶をしながら歩いてくる。


アデリーナは、

何気なくその姿を目で追った。


「……あの方は?」


近くにいた女性が答える。


「ジルベール公爵ですわ」


「ジルベール公爵……」


アデリーナが小さく呟いた。


その直後だった。


給仕の者がアデリーナのすぐ横を

通り過ぎようとした。


その時、別の客とぶつかりそうになり、

トレイが大きく揺れる。


「あっ……!」


アデリーナが思わず身を引こうとした

その瞬間――


「危ない!」


誰かの手が、

アデリーナの手を咄嗟に掴んだ。


顔を上げる。


目の前に、ジルベール公爵がいた。


「大丈夫ですか?」


「……はい」


アデリーナは答えたものの、

掴まれた手を見つめた。


ジルベールはすぐに手を離す。


「失礼しました。咄嗟に……」


「い、いえ……」


アデリーナの頬が、ほんの少し赤くなる。


「……ありがとうございます」


アデリーナが微笑む。


「お怪我はありませんか?」


「はい。大丈夫です」


ジルベールは安心したように微笑んだ。


「それならよかった」


ジルベールは、王女に対して特別な態度を取ることもなく、自然に話しかける。


王宮で出会う人たちは、

いつも自分を王女として扱う。


丁寧すぎる言葉。


慎重な態度。


そして、

どこか距離を置いたような接し方。


けれど、この人は違った。


自然だった。


アデリーナは、いつの間にか

緊張していたことさえ忘れていた。


「公爵様は、こういうパーティーがお好きなのですか?」


「嫌いではありませんよ」


ジルベールは庭園を見渡す。


「ただ、こうして花を眺めている方が好きかもしれません」


「私もです」


アデリーナは嬉しそうに微笑んだ。


「では、少しだけご一緒しませんか?」


ジルベールが手を差し出す。


「もちろんです、ジルベール様」


アデリーナは嬉しそうに微笑み、

その手を取った。


二人はゆっくりと庭園を歩き始める。


色鮮やかな花々。


柔らかな音楽。


暖かな春の風。


アデリーナは

楽しそうにジルベールと話している。


その様子を、少し離れた場所から

一人の男が見つめていた。


ベネデット陛下だった。


娘の楽しそうな笑顔を見て、

ベネデットは小さく微笑む。


しかし、

その隣にいるジルベール公爵へ視線を向けると、わずかに表情が変わった。


「……」


しばらく二人を見つめた後、

ベネデットは静かにグラスへ口をつけた。


エピソード2  完。

お読みいただきありがとうございます。

次回、「エピソード3 偽りの潔白」です。

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